短編?読み切り?むしろネタ+毛? | ナノ


理屈でどうこう出来ない事象程、コワい物も、者もない。



【眞紅での彼女の生い立ち】



自宅は自宅でも世界的に全てが規格外なとある教会が目印な某総本山での自宅にて折角の休日なのにも拘わらずうっかり軍人なんつーモンやっちゃってたせいでただただ激務による疲労によりまるでただの屍のように寝ていた私に突如降りかかった災難は、神様の手違いか何か知らないが再び転生(させられる)という非常に面倒くさい出来事だっ略(あんま略せてない)。

しかも…や、「しかし」だな、うん。
まあ、アレだ。(アレ?)。

此度は何の弾みか、ほぼ自世界に戻ってこられたっていう。

つまり、前々世界に殆ど近かったっていう。

むしろソコよりマトモ(当社比)だったっていう。

とりあえず、某真っ黒クロスケーな赤ん坊に怯えるコトはまず必要としなかった。

やったぜ、自分。

…や、神か?

まあなんにしてもどこぞのRPG的世界、まあまんまだったんだけども、そこからは逸脱出来たのだ、もう『タイダルウェイブ(※流される)』な人生を味わわなくて済むのだ。(厳密に言うとシリーズ違いだけどでも前世界ネタごめん!だが俺は悪くヌェ…いや悪かったごめん!)。

これが喜ばずにいられようか。

……などなどと、転生つまり生まれ変わった私はやっぱり(前回と同じく)胎児からのスタートだ。だが二回目人生で幾度となく経験済みなクセしてなんの嫌がらせか記憶だけはスキルと違い上手く引き継がれない仕様の私。けれども三回目人生にはこれまたなん略それは当てはまらず因みに皮肉の如く最初の人生で死んで以来すぐに次の生を受け続けたせいかどんな身体でどんな種族であろうとも生命として存在する限り睡眠中以外は基本的に意識を保てるようになってたりする訳で。

やっぱり(二回目)今回もここでのニューママとなるであろう女性の母胎で早くもお目覚めかまして――や、目は羊水ドンボ(どぼん)なんで実際はまだ開けちゃないが――そうしてまた、には変わりない状況な為短すぎるふくふくしたお手手を万歳宜しく咄嗟に頭を抱えかけた私は…、

そこで、気付いた。

何てこった。
ぶっ飛ぶ喜び。


「(…ワッツ?なんか、母胎…鮨詰め系?)」


ぱすぱすっと、あんま喜んでいらんない状況下を指し示す柔らかい『何か』に二つぶつかったコトに、気付いた。
平手キメてなんかごめん。『何か』。

……とりあえず、ここまではいい。良かった。筈。
まだ生まれてすらいない『何か』つまり私と同じくであろう胎児にチョップかましちゃったけども別に軽くぶつかっただけだ。まさかいくら(私と違ってフツーの)胎児でもそれくらいでどうこうはならんだろ!…多分。
でもまあ幸か不幸かどこに飛ばされようが私にはアホみたいな血が流れたままなのだから、こう言っちゃアレだがどこか悪くして生まれたとしても出来る範囲なら全力で助けていくさ。

だって。


《これは……三つ子、ですか。しかも全員、女の子のようですね》


そう、私以外に二ついや二人の女の赤ちゃん、私含めまさかの三つ子って現実が、外界から聞こえてきた男性の声しかも即理解できた事から日本語確定であり恐らく産婦人科のお医者様らしき人物の多少驚いたようなそれでいて穏やかな声によって既に意識ある私に音声ガイドのように情報として流れてきたのだから。
因みに前世界からの離脱を直ぐ様悟ったのはこうして日本語を聞き取れた事による。

つまり、今回は三つ子なんだってさ。
……イヤー!何このちょっと面倒くさげな気配!加えて揃いも揃っての全員女。いわゆる三姉妹さ…アレか?また一卵性ですかコノヤロー。

とりあえずこれだけは願っとけ。ただのモブキャラ三姉妹で行こうよ行かせてくれそれなら相変わらずの人外でもギリイケるから。見た目偽らなきゃならんような立場とかもう懲り懲りなんだってホント。だってちょいと詳しく言うならば前回はとある王女様の片割れとかやっちゃってたんで。アレはマジで名前サンの薄すぎる神経が24時間365日、常に磨耗状態の日々だった…1年365日じゃなかったから余計に。

…まぁそれはさておき、そんなカンジで前回双子だった私が何の因果かこうしてまたもや姉妹を得たのだ、前回が前回だっただけに今回こそそれなりに仲良く出来ればと思うのもまた必然というものだった。
上か下かはまだ謎だが二人の姉妹に何かあれば助けていくべきじゃああるまいかと思った訳だ。仮にも新しい家族なのだから。
…件の姉妹達がモブキャラなら、が前提に付くが。つかまだどこかすらあやふやで生まれる前から色々わかっちゃう程の医学、それを司っていた言語からして現代日本ってのは判明すれど、ココがほんとのホントに私の生前と寸分たがわない何の異分子もない現代日本であるかはまだ断定出来ていない。…あいや、もし何らかのお(異)世界である場合、私が異分子なんだけども。

この保身第一あんちくしょうな私が手に手を取って、なんてのはあくまで私の平穏が崩されない場合による。

そして、後から外界から聞こえてきた懐妊はわかってたのだろうそれ自体には然程動じた様子もなく、しかし性別や一度に産むにしては一般に多めの人数に驚愕しつつも喜ぶ母らしき女性の声と。
そうして妊娠に関する注意等あれこれを彼女に伝授する医者の会話、は実に和やかなモノで全くもって危険は感じなかったのだけれども、ドアのパタンという、硬質だが静かな開閉音らしき音の後の事。

診察室を後にしたのであろう母がぼそりと呟いた独り言に、私は何やら不穏な展開を感じずにはいられなかった。


《嗚呼。双子じゃなくて、良かった。本当に、良かった…!》


…“二人が”(強調)アカンとかどゆコト母さん。


《だって私は『あの村』に程近い水上地方の出。双子を身籠ったなんて周囲の村人達に知られたら――》


……ど、どうなるんだ母さん!?


《ッ……まあ、双子じゃなかったんだから気にしても仕方ないわね…とりあえず早くうちに帰りましょう。
…ふふ、操に何て伝えようかしら…名前は何が良いかしら!一遍に三つも考えなくちゃいけないなんてちょっと大変だけれど三人、本人達全員が気に入るような素敵な名前、考えなくっちゃ!》


疑問虚しくそれ以上母語らず。
どうやら旦那さんか誰かか、操さんとやらにサプライズやきたるべき素敵な未来図をしたためつつ、彼女は自宅へ帰っていったのだった。十中八九、コチラさんは私達のお父さんとやらだろう。
というか…今時、村人…?確かに全国津々浦々、市や町に進化しようがそれらが増えようが、まだまだ村は沢山ある。だけどその言い方は些か古めかし…くないか?
私の偏見だろうか。

違和感もそこそこに彼女の心からの三つ子への歓喜に満ちたそれに先程の翳り…不穏は微塵も含まれてなかったものの、『双子ダメ、絶対』『あの村』の二つら辺が何かしらのキーワードになり得そうで私はいっその事、いつも通り引き継いだであろうスキル・悪魔御用達空間移動(好きな場所に狙って移動する)術で、オギャーする前にトンズラここうかとすら企てたのだった。




オタクな私が昔々に、そう生前に、ハマった何らかの世界でなければ実行に移さずに済むんだけども。


***


しかしこの世界が前々回に程近い基準を持つという事は、次なる新たな飛ばされ先であるココってつまる所現代日本。
最先端の医学に支えられた情報はまず嘘をつくハズもなく、三つ子とバレバレな私プラスあとの二人の内誰か一人でも欠ければけっこうすぐとゆか確実に判明する上、実は三つ子は誤認でしたー!なんて医者おま、な凡ミスも到底ありえなかった。

何より。
あんなに双子を嫌がりまあそれを差し引いたにしても、私を認識し且つ誕生を心待ちにしていてくれてる新たな母もとい父(泣いて喜んでた)を裏切るような真似、私には出来なかった。

だって心苦しすぎるじゃないの。居た筈の、身籠った筈の我が子が理由も無くまた判らず、一人欠け、居なくなった、逝ってしまったのだという事にされるだろう私を想いながら癒える事のない傷を抱えいつまでも泣く母なんて。父も、男とは言えどこかでふと泣くかもしれない。まだこのいずれの母といずれの父と対面すらしてなくともそんな惨い仕打ち、私には出来なかったのだ。

バカしたと思う。ここで逃げてりゃ色々と巻き添え食ったりなんかしないのに。
……でも。

前回で私、生まれる前だけとはいえども認識すら、されてなかったからね…。詳細は置いとくよ。その点、今回は既に私の存在は知られている。しかも、多大な歓待を受けられる事は想像に難くないとまで来てる。
やはり嬉しい事では、あった。望まれるというのは。

でも――


「…天倉さん!三人ともとっても元気な女の子ですよ、よく頑張りましたね!」

「でかしたぞ、よくやった静ッ!」

「ふふ…操ったら。…それで、名前だけれど。一番おねえちゃんは、『繭』」

「真ん中は、『澪』だな」

「そして一番最後の子は、『名前』。

――ああ…皆、みんな…生まれてきてくれて、ありがとう…!」


新たな私の苗字は看護師さんが喜色満面に両親に告げた台詞からわかって頂けたであろう、『天倉』。その姓とたった今聞こえてきた姉達の名前。クソ神の操作によるモノか今回も変わらない私の名前。

最初と最後、くっつけてはい出来上がり。私の新、姓名――天倉名前。

けれどもここで、私の生きて(そして死んで)きた年数をちょいと思い出して頂きたい。

前述の苗字や名前達が導く答えに、私の危惧が着々と当たりつつあるのだと私がきちんと気付けたのは、とある大きな出来事が起きてからだった。

つまり私は、大まかな流れをうっすら覚えてる程度であり、主要人物“二人”のフルネームをうっかり忘却の彼方に飛ばしてしまっていたのである。




そう、私が全てを悟ったのは……上の姉・繭が下の姉・澪と何らかのいざこざの末、『あの村』とやらの付近の母の出身地である水上地方に聳える、幼少の二人が遊び場にしていたとある山の崖下に転落し右足を壊してしまう現代医学を以てしても残念ながら一生ものの大怪我を、負ってからだった。

そして、その山で動けなくなった上の姉、動きの取れなくなった下の姉、実の娘達を捜そうと天然の迷路に足を踏み入れミイラ取りがミイラになった父が捜索に出た日を境に天倉家に戻る事が……なくなってからだった。

…これって、せめて上の姉に関してはハーフエルフだとか天使だとかの血による治癒術持ちな私の出番だったりするんじゃなかろうか。
父に関しては、強大な何かが絡んでいそうで迂闊に手を出せずに……終わりそうだったから。
だから、せめてなのだ。

いくら私が、そのハーフエルフのハーフとなった由縁に科学で説明のつかないあらゆる不気味への専売特許を、持ち合わせてるからって。
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