短編?読み切り?むしろネタ+毛? | ナノ


その世界では最強でも、現代日本じゃ野垂れ死ぬんじゃなかろうか。



2.拾った生き物(もの)は最期を看取ろうホトトギス、転がり込んできた人(もの)はそのままポイ捨てホトトギス



『…?なんか下が柔らか…、っ!?』


一言言わせてもらって良いだろうか。
そんなつもりは一応一ルフ(約5年前の世界的に言ってみました)たりとてない(つもりな)んだけど見る人(一般人)から見れば変態のレッテル貼られるのもやむなしな私にだって羞恥心や女として大事に取っておきたいモノがないワケじゃあ、ないんだよ。だから今すぐどかねえと爆発すんぞ(結構本気)(魔術…は色々ヤバいだろうから腕力的な何かが)目の前その距離僅か5センチの顔面偏差値(受験風)が異様に高いイケメンがよォ。
…しっかしホントに極上の顔立ちしてんなオイ……いっそ逆に喰っちまうぞ私の場合色んな意味でだけど。

まあ、我が種族(の一部)が基本的にいただきますする場所はケンカ売ってんのかって程ドンピシャな具合に残念ながら金のわっかに覆われてるからそのままじゃ無謀だろうがな。
このいわゆる屈辱的な体勢も相まってってコトで腹いせに嵌め込まれた紅い宝石的なの割んぞコラ。


『え、な、何でおま…!』


私に重なるそいつが下を向き私とガッチリ目が合った途端ムダに整ったカオに赤が差した気がしないでもないがそんな事はどうでもいい。
どこの露出狂だと言いたくなる晒け出された腹筋から見るに私の上に覆い被さってるコイツはどっからどう見たって男。太股ら辺にも相手の下半身のゆったりした布のせいで何かが…な感しょ、くも……ゲフンゲフン。

一人暮らしなら自分は自分で守るしかない。幸い私には男だろーがけちょんけちょんにする手ならいくらでもある。因みに一応不本意です。
私の行動は他人から見ればさぞや素早かった事だろう。

あーあ、何でこんな事になってんだろ、ホント…。


『ぐわッ!?』


相手の性別を判断するやいなや、現代日本において持ち主がたとえ女でもすれ違った人10人が10人全員振り返りそうな限界じゃね?って位置まで伸ばされた――ロン毛三つ編みいや連ちゃん団子(?)頭に頭突きをくらわせた。私?勿論痛くも痒くもねーのよ防御術咄嗟に額全体へと纏いましたからァ!
ついで、ヤツがもんどりうつ暇も与えず相手の下から抜け出し、背後に飛び乗り彼の両腕を背中側に回し押さえつけ動きも封じる。私の体重は基本的には相変わらずの軽さだったので暴れられて吹っ飛ばされないよう、変化の応用で体重のみ一気に増やす。

…なんか潰れたような声が聞こえた。


「一体どうやって侵入してきたんだあんた、サツに突き出すぞこの変態露出狂野郎」

『額がッ…ってこんどは腕!や、やっぱりいてぇ!?しかもさっむ!何だここ!?つーか何しやがんだ離せよ!いきなり何なんだよお前、訳わかんねー言葉喋りやがって!』

「、」


今回の転生からわかるようになったその言葉群。
何というか、この瞬間のための布石だったとでも言うんですかねあのあっちでの12年間は。いやまさか。


「あー…コホン。――『あなた、どちら様ですか』」


……何か、とっても面倒なニオイがプンプンするのは気のせいであってほしい。切実に。




『…で、ジュダルさんは「煌帝国」の禁城の宝物庫とやらで家捜しをしている最中、何かに触れた途端ここに来た、と』

『人聞きワリー事言うなよ!一応頼まれゴトしてたんだっつーの』

『手当たり次第漁ってたんでしょう?同じ様なモンじゃあないですか。…っていうか睨まないで下さいよ、故意じゃなかったのに頭突きした上取り押さえた事は謝りますけど、普通恋人でもない男性にあんなコトされたら正当防衛かましますって。あーあ、嫁入り前なのにナァ…』

『だああ悪かったっつってんだろ!お、思い出させるなよあれは事故だって何度も…!』

『…プッ』

『笑うな!ふぇ……へっくし!』

『…ププッ』

『くそぉー!』


あれから。ヤツの誤解だから何もしないと必死すぎる弁解を聞き入れてやり、とりあえず居間にてお互い向き合って一応警戒しながら自己紹介をした。
フルネームを答えた訳だけど、漢字もついでに紹介しとくかと思ってその辺にあったメモ帳に書いたら「煌帝国のやつらみたいだな」とか感想を頂いた。まあ日本語だしね。

あと、ここは日本で彼の国(神官なんだってさ)だという煌帝国とやらではない事も説明しておいた。
そしてどうせすぐわかる事、きっと隠し立てしたところでこいつにはすぐバレる、って事で世界ごと違うのだとも。

今回、受験の壁とか何のその。転生の壁に比べちゃ紙ペラみたいな薄さでしかない。ここに戻ってきて漫画は何回か読んでいたからいつもより原作知識が鮮明なのだ。オタクパワーでも破れない私の記憶力はしょんぼりなので漫画の一コマとか細かいシーンは忘却しかかってたりもするが、いつもより後手に回るこたああるまいよ。
ヤツがいかなるスペックをお持ちなのかを瞬時に思い出し対処出来た理由がこれだった。

流石に完全に納得して頂くにはまだまだ時間はかかるだろうけれども、何となくはわかってくれたのは救いだった。前者、国の違いは部屋の様式のかけはなれっぷりから。そして後者、世界の違いは…アレ、がいないから。らしい。本人曰く。
ただわかってくれたとはいえ質問攻めが過去進行形でヤバかった。たぶんこの先もこの世界に慣れるまでは続くだろう。そら当然だよね、気づけば(彼にとっての)異世界とか私も転生後は随分と困惑したものさ…っていや、馴染まれちゃう前にお帰り頂くのが一番なんだけどね。
私の平穏のためにも、彼のこの先の埋まりまくりであろう(話的な意味でどこら辺から来たかは知らん)予定的にも。

主人公ズの敵(しかも要)がこっちでホームレス(ウチに置くとは一言も言ってない)してたせいで全話欠席とか笑えない。


『うう…さみぃ…』

『冬なのにそんな腹筋丸出しルックしてればそりゃあ…とりあえず暖房はつけたんでもうすぐ暖かくなりますよ。それまではほら、これでもひっ被ってて下さい』

『ブッ』


そして、彼はこの日本的住居が珍しいのか寒さで震えながらもキョロキョロしているだけで猜疑心とか警戒心とか皆無っぽいのも救いだ。
今も適当に投げた(顔面ストレート。ごめん。どんな声あげるかと内心嬉々としてました)そこら辺に置いてあったブランケットにいそいそくるまりながらひっきりなしに部屋を見回して目をパチクリしてるし。

…おい、そんなんじゃ腐っても美少年なんだから飢えたお姉さま方とかの餌食になるぞ。私は眼福程度にしか思わ……なくない。めっちゃ飢えてる。だって今受験で色々欲求不満にすぎるんだよ乙女ゲーも当然封印中なんだもの…。現実の男とかオタクな私はぶっちゃけあんま興味ない(見込みナシの現実から湧き出る負け惜しみじゃなくってよ!)から疑似恋愛とか私超好物なワケ。
でもま、こいつがいかに危険人物かってのは読者としてわかりきっている事だ。よって、この私の大の男をも屈服させうる腕力に物言わせてうっかり飛びかかるなんて事故(…事故?)私にはありえない。命が大事すぎて。

…ウチで助かっただろうよ腹筋。私は世界ごと救助が必要になったがよ。

とりあえず問題は色々ありすぎるがまず第一。用いられている言語が日本語じゃなかった点。それらはまさかの“今回のあっち”の世界で使っていた言葉だった。
コミュニケーションを成立させるには数年のブランクを無視してチェンジし彼に合わせて話すしかなかったというね、まあ忘れたくても忘れられないけどね、何だかんだで数年前まで日常的に使用していたのだから。
余談だが私には天使御用達ーな便利翻訳的能力があって言葉が通じずとも相手の波長に合わせて話すだけなんで人どころかそれこそ人外とも会話可能なんつーどこぞの青狸のような便利コンニャクばりの反則能力は持ってた訳だが、今回は前述の体験が功を奏し必要としないで済んでいた。

露出狂改めジュダルと名乗った彼は、存外ウブなのかはたまたこの美人だったろう向こうの母譲りのカオに何かを感じちゃったのかは謎だけれども。

…ああそうともさ、また変わってたのだよ要らん事に。自宅にて一人暮らしだからわざわざ最初の自分になんて変化してなかった。
昔々に自分の世界的な地上で生きるのならなるべく元の自分に近づきたいってささいな願望からそのわざわざをやってた事もあったけども、こうも飛ばされてばかりだとそろそろ諦めの境地でなんかもういいやみたいな…とりあえず外出時は私の元の顔じゃないと当然周りに私とわかってもらえないからそうするが自宅でだらけてる時は忍術系統は取っ払っちゃってたって訳。つまり向こうの世界、両親からもらってきた容姿の私を女子高生にした体(てい)で家ん中では過ごしていた。あとアレだ結構真面目な話、受験でまさになりふり構ってらんなかった。私ハッキリ言って人の二、三倍勉強しないと危ないおつむなものでして。トホホ…。

彼の話に戻るがその正体とやらは、何となく反応見たさに何だかついいじりたくなる憎めない、


『「マギ」とやらも案外可愛いですねー』

『関係ねェよ!つか男に可愛いとか言うな!』


――マギ、なのだ。
しかもよりによって、堕転しちゃってる方の…。

(私も悪魔寄りだから片足突っ込んでるようなモンか?)。

ジュダルからそう聞いた瞬間、私は暴れたらシメる発言で半分脅しつつ一旦居間を離れ、急いで自室に向かった。
…まあ、テレビのリモコン渡して簡単に使い方を教えてやった時の反応を見るに然程心配はなさそう(画面がついた時なんて目が輝きまくってた)だったが、それよりも。


「やっぱり、ない…」


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