● 愛される男 @

彩子は学校帰り、自身がバイトしている事務所に向かう。

事務所のあるビル前でふと立ち止まると、既に事務所に電気が点いている事を確認する。


―――今日は先生、もう居るのかな。


そんな事を考えながら、手土産のマフィンが入った袋を握り直すと足早に事務所へと向かう。


「おはようございます。」


こういう仕事では何故かいつの時間帯でも挨拶は『おはようございます』だ。

それにもようやく慣れて来て、自然に笑顔で挨拶出来る様になってきた。





しかし電気は点いているものの、弥勒院の姿は見当たらない。

少し不思議に思っていると応接用のソファーから声がした。


「どうもお邪魔してますー。」


呑気な声でそう言った人物はソファーから立ち上がると軽く頭を下げた。

その様子を見て彩子も慌てて相手に頭を下げた。


「こんばんは!
生王さん。」


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