● release @

夜陰の中、見渡す限りの海には漣が静かに音を立てる。

空には満天の星。

それが水面に映し出され、キラキラと儚い光が現れては消えた。

潮の匂いが混じった肌寒い風が、バッシュの身体を少しずつ冷やしていった。

路肩に腰を下ろし、足元にすぐ海を感じいた。


ここは港町バーフォンハイム、昼間は人々で溢れ賑わうこの街も、酒場も閉まる程の時間帯になると流石に人影は僅かだった。

そんな中わざわざバッシュに声を掛けて来た人物が居た。


「考え事?」


バッシュはその声に少しばかり驚いた後、声がした方を向く。

声の主はバッシュの左隣に腰を下ろし、同じ様に足を投げ出して座ると、バッシュの方に顔を向けた。

眠ってしまったと思い込んでいた隣に座るその細身の少年に、バッシュは静かに尋ねる。


「眠れないのか?」

「…オレが先に聞いたんだけど。」


すまない、とバッシュが言うと、別に言いけどさ、と少年は言う。


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