● 09'Valentine @

「ヴァン兄〜!」


一人ぶらぶらとラバナスタの街を歩いていたヴァンはその声に気付き足を止める。

振り向くとヴァンに向かって一人の少年が物凄い勢いで走って来る。

特別体育会系ではないその少年が自分の元へ今まで見た事も無い勢いで来るものだから、ただ事では無いと思い緊迫感と共に多少の好奇心を抱いて彼に近付く。


「どうしたんだよ、カイツ。」


あくまで落ち着いた調子でヴァンはその少年―――カイツに声を掛けた。

カイツは肩で息をしながら両手を自分の膝に付いた状態で懸命に話し始める。


「ヴァン兄っ…はぁ、逃げなきゃっ…!!」


そう言うとヴァンの両腕を掴んで、切実な思いを込めてカイツは必死に訴えた。

ヴァンは困惑しながらも、とりあえずカイツを落ち着かせる為に近くの階段まで連れて行き座らせる。

不安そうな顔をしたままだがカイツは徐々に冷静さを取り戻していく。


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