夏色ストライプトラップ | ナノ


夏色ストライプトラップ



(ろじさこ♀+久しろ♀)
(二年生が中三・15歳)



僕は久ちゃんが好きだ。大好きだ。
でも多分久ちゃんは僕のことを女の子としてみてない。多分とか言ってるけどかなり確信してる。

それが僕はちょっと不満なんだけど。


「だって年頃の女の子だよ?普通色々思うところあるでしょ!!」
「それはまあ、久作だし」

夏休み。も、もう半分をとっくに過ぎ。

勉強会と銘打って集まった左近の家で愚痴を零す。
話題の久ちゃんも三郎次も参加。要するにいつもの4人だけど、じゃんけんで負けた男子二人は買い出して現在不在。
この隙に最近常々思っていた不満を事情を知る左近にぶつける。

「しろと同列に扱うのもアレだけど、僕だって多分久作に女の子扱いはされてないよ」
「されてたら僕いじける」
「それくらい身近ってことでひとつ」

宿題を広げたテーブルの上に突っ伏す。
身近なことに文句はない。ある訳がない。クラスも部活も委員会も違うのに一緒に居られるのは嬉しいしありがたい。
ただ久ちゃんの僕に対する扱いは世話を焼く対象、妹か何かか。
それが不満だ。

「大体女に興味があるような奴じゃないじゃん」
「それは・・・・幸いなことだけどさ」
興味があったらもっとやだ。他の人のものになるなんて絶対やだ。
「どーせ僕はちびでがきんちょで色気もへったくれもない馬鹿ですよー、だ」
「体力馬鹿も付け加えとけ」
「左近ひっどお」
「自分で言ったんだろ」
毒のない軽口にはからかいの心しかない、ちょっとむっとしたので反撃、爆弾投下。

「三郎次は女の子結構好きだよねぇ」
麦茶を飲んでいた左近がぶ、と吹きかける。
「・・・・なんでそこで三郎次がでてくんの」
「一番身近な男の手頃な例を挙げただけだけどなんでそんな動揺してるのかなぁー?」
口元を拭いつつ、にやにやしている僕を軽く睨みつけてきて一言。
「ほんと見た目よりも強かだな、お前」




「左近って好きな奴いんのかなぁ」
真夏の炎天下、汗を拭いながらコンビニに歩く道中、隣を歩く幼なじみが脈絡のない話を持ち出した。
もう何度となく聞いたぼやきに近い疑問だ。

長らく三郎次が左近に片想いしていることはずっと前から知っていた。
あれで案外モテるから誰かと付き合ったりもしてる様子だけど、多分三郎次の視線はずっと一点にある。
変に臆病で滅多にモーションをかけることすら出来ない始末の性質の悪い純愛だ。

こんなことをぼやく時の三郎次は正直気持ち悪い、けど。

「無責任なことは言えねーけど・・・左近がお前以外を眼中に入れることが考えられない」
「マジか」
「あくまで俺がだよ」

変なとこ真っ直ぐなところ、俺は嫌いじゃないから。

「お前らが上手くいけばいいって思ってるよ」
「・・・サンキュ」

いらっしゃいませ、という声が冷気とともに迎えた。




もう勉強には飽きたのか、それとも男子がいない間に徹底的に問いただしてしまおうと言うのか。

「つーかほんと、左近て誰が好きなの」
「いない」
「うっそだ、じゃあ聞き方変えるよ左近て三郎次を恋愛対象としてみてるの」

もう問題集には目もくれていない。シャーペンのノッカーでこちらをびし、と指し見つめてくる。
案外鋭い眼光に蹴落とされかける。

「わからない」
む、と不満そうに四郎兵衛がノッカーを齧る。
「じゃあ三郎次が告白してきたらどうよ?付き合う?振る?それは答えじゃないの」

そうだ。その通りだ。
でも、その答えすら今は出ない。

「僕は――」
「ただいまー買ってきたぞ!」
二の句を続けるのに迷った瞬間、ドアが開いて三郎次と久作がビニール袋を突き出してきた。

なんてタイミングだ、と冷や汗が出る。

「おかえりーおつかいできた?」
しろが何事もなかったように話題を移し、久作の置いたビニール袋をがさがさ探る。
「ガキじゃねぇんだからよ。あーでも左近の言ってたミルクティー売り切れだった」
「えぇ、じゃあ連絡とかしろよ・・・何買ってきたんだ?僕の分」
「同じシリーズのレモンティー。ろじの提案」
久作が三郎次を指差す。
「なんか左近ってレモンティー好きそうだなって思ったんだけど」
「根拠ないし飲めないんだよ!馬鹿じゃんメールしてよ!」
げし、と蹴ると蹴ることないだろ、と口答えされる。知ったことか。

「わり、じゃあ俺のサイダーと交換で許して」
「・・・・それならいいけど」
袋の中からサイダーを取り出して渡される。甘んじて受け入れ、蓋を開けた。
その途端泡が吹き零れる、なんてテンプレ展開はなくて少し安心したけど。

お前、レモンティー飲めたっけ。




もう何時から好きだったかなんて曖昧だ。
とにかく長いのは確か。小学校のときにはもうそうだった気がする。
まさかそんな初恋が中三になってまでも引きずるなんて思わなかったけど。
気持ちは色褪せないし、むしろ熟成でもされて想うところが増えるばかりだ。
いつまでも伝えられない気持ちにケリをつけようと何度も忘れようとも思って他の女子と何度か付き合ったこともあるけど、今思えば全部それは無駄だった。
だって可愛いとは思えても愛しいとは思えなかったから。

「三郎次ってさぁ、女の子好き?」
口に合わないレモンティーをちびちびと消費していると、しろから突拍子もない質問が飛んでくる。
「はぁ・・・?別に嫌いじゃないけど、特別好きでもない」
「・・・その割には付き合ったり別れたりしてない?」
「いや、それはまあ」
痛いところを衝かれる。付き合うきっかけは告白されたから、試しに付き合ってみただけで。
今思えば彼女たちには酷なことしたかも、と少し申し訳なく思う。

「今まで彼女出来たとか面と向かって教えてもらったことねーけど、何人くらい元カノいんの?お前」
久作が話しに入ってくる。そりゃそうだ本当の意中の人にそんなこと知られたくない。
「3人」
「モテるねぇ、色男」
「古い」

でも『付き合って』も『別れよう』も自分から言ったことはない。いつも自分はその言葉に了承の言葉を返すだけだ。

「長続きしないんだよなー、俺」

2番目か3番目かは忘れたけど、別れ際に悲しそうに笑って言われたことがある。
『いつも三郎次はあたしじゃない誰かを見てるよ、それにあたしはもう耐えたくない』
図星だ。
いつも俺の優先順位の一番は左近で、それはもう無意識に決定付けられた自分の中の事柄だ。

「ま、理由はわかってんだけど」
「モテる男は違うねぇ」
「やめろって」

はやし立てるしろと久作に混じっているように見える彼女はさっきから聞いてばっかりで話さない。
何でかな、と考えるが明瞭な答えが見つかるわけでもなく、そのまま迷宮入りした。
自分が意識下で彼女を視線で追っていること位、前から知っていた。

サイダーのボトルのキャップが空きっぱなしじゃ、せっかくのサイダーの気も抜けてしまうのに。



夏色ストライプトラップ




時間かかった割に仕上がりが微妙な気がしてならん・・・
それぞれ全員各視点から語りやらせてみましたが久作のこの短さ。
さらに時期の所為で久しろターンが短い。久しろ難しいです


title:銀色懐中時計。





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