欲しいものには手を伸ばせ | ナノ


欲しいものには手を伸ばせ




(一年生s)(カプ要素なしのほのぼの話)



もう夏だ。うっかりしたら熱中症を引き起こすし、外で立っているだけで体力は奪われる。
帰る頃には水筒の中身はとっくに空っぽだ。

「あー、もうアイス食べたいなぁ!熱くてたまんないよ・・・!」
信助が帰り道に突然叫ぶ。
それは俺も同感で、多分他の皆もそうだろう。

「おれも食べたーい!ガリガリくん梨食べる!!」
もうそれ宣言じゃんか、食うなら勝手に食えよ。とか思うのは卑屈な性格の所為だ。
「僕はアイスの実がいいなー」
「私パピコ!」
輝くん、葵ちゃんと話しにのる。この場でこの会話に加わってないのは後は俺と剣城くんだけだ。

「・・・モナカアイス」
あ、そうですか君ものるんだ。意外だ、いや別にかまわないっちゃかまわないんだけどさ。
「狩屋は?アイス何が好き?」
天馬くんが興味津々と言った様子で尋ねてきた。
とっさに思いつく好きなアイスと言ったら、

「・・・ガリガリくんソーダ」

答えると、他の皆が一斉に俺を見る。ちょっとまってなんか今俺変なこと言った?

「ちょっと思っただけなんだけどさ、狩屋くん」
輝くんが大きい目をぐりぐりさせて俺に遠慮がちに言った。
「ソーダ味って水色でしょ?」
何を言い出すのか。
「うん」
「狩屋くんの髪の色って水色でしょ?」
「うん」
だからなんだと言うのだ、と言いかけて輝くんの言葉に遮られる。

「今ちょっとさ、共食いっぽいって思っちゃった」

「・・・・・は?」

思考回路が停止。

「あ、それおれも思った!!」
「僕もー!!」
「ああ、なるほどねー」
「・・・くっ・・・」
「ですよね?」


周りの連中が次々と同意の姿勢を見せる。
えーとつまり、水色の髪の俺が水色のアイスを食べるのがおかしいと?

「なんだよそれぇ!!!」
「だから思っただけだってばぁ!そんな怒らないでよ恐いから!」
輝くんに怒鳴りつけると彼があとじさり逃げ出す。逃がしてたまるか。
走り出した時に後ろからまた声がした。

「ソーダ狩屋!」

天馬くんか信助くんか。その声に輝くんを追いかける足を止めた。
「お前らもぉおおお!!!」

きゃー、と楽しそうな声を上げて追いかける俺から逃げる三人。大してこちらは一人、分が悪い。
でもやめる気にもならなくて、追いかけっこは少しの間続いた。


「はぁ・・・あっつ・・・元々暑いって言うのになんでわざわざ・・・っ」
「だって・・・狩屋がさぁ・・・」
「人のせーに・・・すんなよっ・・・」

息も絶え絶えに会話を交わす。体の暑さは最高潮で汗が止まらない。

「本格的にアイス食べたくなってきちゃった・・」
「俺もだよ・・・」

これが発端で、この面子でじゃんけんで負けた人が全員にアイスを奢る、と言う企画があがった。
なにせ六人分なので金額はそこそこだが基本的にハーゲンダッツなどの高級アイスはナシ、安いアイスに限ると言うルールも出来た。


死闘の結果、一抜けしたのが葵ちゃんと輝くん、この二人はどこまでも要領が良くてやがる。
次に抜けたのは天馬くんと信助くん最後に残ったのが俺と剣城くんだったが、一発で俺が負ける、という惨事に。


「ちっくしょぉお・・・」
コンビニで頼まれたものを買い集めて、河川敷のベンチに走る。
微妙に遠いというのになんでわざわざ。自分の引きの弱さを恨もうそうしよう。

「ソフトクリーム僕だよ!」
「アイスの実買ってこれたー?」
「梨味ー!」
「モナカ割れてないだろうな・・・」
「パピコ溶けてないよね?」

皆勝手なこと言いやがって。心の中で悪態をつきながら自分の分を取り出す。
ベンチに腰掛け、並んでアイスを食べる。冷たくて美味しいのだけは裏切らない。

「もう夏至も過ぎたのにまだまだ日が長いね」
葵ちゃんが空を見上げて言う。
「まだ夏休み入ってないし、これからが夏だよ」
天馬くんが答えた。

まあなんだかんだで穏やかだなぁ、とは思う。多少ムカつくこともあるけど、このメンバーでいるのは心地良い。手放したくのは事実だとも。


正直暑いのは大嫌いなんだけど、こんな夏なら悪くない、とも思った。



欲しいものには手を伸ばせ





カプ要素なしでほのぼの系一年生s。 
一年生大好き可愛い・・・
狩屋は公式でいじられキャラなのでいじりやすいですねとても。
ごめん大好き。

title:銀色懐中時計。





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