右翼に恋を 左翼に愛を | ナノ


右翼に恋を 左翼に愛を



(ヘラアフ)(ゲームネタ)


まるで空を舞う鳥だ。白い白い、ひょっとしたら金色だけれども光輝く所為で色が無いように見える、そんな神聖な鳥。
あの必殺技を手に入れて以来、すっかり空を飛ぶことが癖になった彼は度々羽を生やし、大空を気持ちよさそうに舞うのだ。

今彼は、自分の手に届かないところにいるのだと思って少し寂しく、悔しく思う。


「アフロディ!降りて来い!」

ありったけの声で叫ぶ。上空は風が強いことも多く、自分の声が届かないこともしばしばだからだ。
そして自分の声は今回届いたらしい。少し不機嫌そうな顔をして、渋々といった様子で羽を羽ばたかせつつ降りてくるのだ。

「なあに?ヘラ、まだミーティングの時間には早いんじゃないの?」

目の前に降り立ってすぐ、こんな言葉を吐く。楽しみを邪魔されたのが気に障ったのだろう、少し後ろめたい気持ちも生まれる。
「体力の無駄遣いをするな、今日はミーティングもあるが普段どおりの練習もあるだろうが。遊びで体力をすり減らして支障が出るのは本末転倒だ」
建前だが、本当のことでもある。するとアフロディはふん、とそっぽを向いて部室の方向に歩き出す。
「生真面目な理由並べてないで、寂しいって言えばいいじゃん」
続けてどうせ君のことだから空にまで嫉妬してるんでしょ、と人を小馬鹿にする発言を吐いた。
誰がそんなこと、と言いかけて止める。その気持ちも無かったわけじゃない。

否定しない自分を見て、図星だと断定したらしく「嫉妬深過ぎるのも困ったものだね」と呟いた。
それくらい自覚してはいるが、困ったねと言われてつい顔をしかめる。
前を歩くアフロディが後ろを振り返り、このしかめ面を見て笑う。
「ま、嫉妬もスパイスのうちだよ」
嫉妬の無い人なんて物足りないじゃないと。
それを言ってまた前を向いた。


世宇子のグラウンドは天井が基本的に吹き抜けになっている故、晴れているときは大抵青空を拝み、日光を浴びる。
雨の日は開閉式の天井が閉まる。空調も設備されているが、やはり天井は開いているほうがいい、と思う。ただ晴れるとコイツは空に出かける。困ったものだ。
夏はきつい直射日光もまだそれほど強くない季節、青空は澄んでいて美しい。空に飛びたくなる気持ちはわかる。

美しい空に羽を生やしたアフロディはまた美しく、ごみごみしたこの地上よりもそこにいるほうが似合っているのではないか、とも思うのだ。
だが地上に縛り付けられた自分との格差がまた広がってしまう気がして、それは少し嫌だと矛盾している自分の考えに苦笑した。

なぁ、と呼びかけ、今思ったことをそのまま話す。いつの間にか、ふたりとも足は止まっていた。
あまり頭の良くないアフロディは俺の言葉をゆっくりゆっくり飲み込み理解してから、ああ、と納得した。

「美しいと言ってくれてすごく嬉しいけど、僕はヘラのいない空で過ごすのは寂しい。だから空はあくまでも散歩コースだよ?」

微笑みつつも真面目な言葉に心臓が跳ねる。なんて嬉しい言葉だ、と。
アフロディに歩み寄り、頭を撫でながら言葉を返す。
「俺も、お前のいない地上は寂しいからな」
するとやっと言ったね、と悪戯っぽく笑った。してやられた。


再び部室に向かって歩く。
「・・・もしかしたらさ、君がゴッドブレイクを覚えれば解決する話なんじゃないの?」
「は?」
ゴッドブレイクの難易度は相当で、才能のあるアフロディが韓国に渡りやっと手に入れた必殺技を俺が「飛ぶため」なんて理由で覚えていいのか。そもそも覚えられるのか。
「君には素質が在る気がするね、もちろん僕以上の努力は必要だろうけど・・・やってみない?」
「教えると言うのか?」
問えばにまり、と笑った。
「教えるのは当然、引退までにばっちり使いこなせるように特訓してあげるよ」

拒否権はもう恐らく無いに等しい。コイツが乗り気になったことを止められるほうが稀だ。
心の中で両手をあげて、降参のポーズをした。


二人揃って空を飛べるようになるのはもう少し先だ。


右翼に恋を 左翼に愛を




かなり時代遅れですがこのカップリングずっと大好きです。
ヘラは80レベまで頑張れ。
てるみちゃんがやたらとにっこにこなのは好きな人と話してるからです。本当です。
へらくん視点で書いてるんですがなんでこんな描写が度々中二臭いんでしょうか。流石世宇子ですね
title:銀色懐中時計。





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