譲れない譲らない僕の居場所 | ナノ


譲れない譲らない僕の居場所




(南倉なれそめっぽいの)(全部捏造)



ひとつ違いだから当然か、初めて出会ったのは入部テストに通った新入部員たちが正式に入部した日だ。
一人ずつ名前とポジションを言って礼をしていく。目立って背の低かったそいつは始め弱っちそうに見えたのは正直な感想だ。
ただ、小さいくせに目つきの鋭い奴だな、と思った。

「倉間典人、FW。よろしくお願いします」

ポジションが同じだったからか、そいつの名前は一発で覚えた。


「南沢、ポジションが同じの奴に挨拶してきたらどうだ。近いうちにトップ組むかもしれないだろ」
三国が余計な気を回す。お前は同じポジションの奴がいないから楽だな、なんて意地の悪い言葉は波風を立てるので飲み込む。
「嫌だ、めんどい」
別に話したくないわけじゃない。けどあまり積極的に行くタイプでもない。
必要が無いならなるべく関りたくなかったし、接しに行きにくかったのも事実だった。


だが言葉を交わす日は案外早くやってきた。
「今日の練習試合は一年を出す。実力を見せてもらう。」
監督がそう言って呼んだ数名の新入部員のうち、その一人が倉間だった。


三国の予想は適当ながら当たっていたとも言える。
FWは他にも居たが、その試合はツートップで進めることになったのだった。
「・・・・先輩、よろしくお願いします」
「まあ、今日はフィフスセクターの横槍も入ってねーから。精精足をひっぱんなよ」
薄笑いを浮かべて軽口を叩くと、即座に言葉が返ってくる。
「そちらこそ、一年坊に足元すくわれないようにお気をつけて」

なんて好戦的な科白。――生意気な、と思うと同時に面白い、とも思った。
「言うじゃねーか、やってみろよ」


生意気な後輩のプレーを見ての感想としてはなかなか、と思ってしまった辺りが不本意だった。
一年坊主の癖に悪くない、と走りながら思う。
ただまだ俺には及ばない、とも。荒削りすぎてまだ無駄が多い。他の一年生も見回すとこれは、と思う奴がちょいちょい混じっている。
今年は当たり年だろうか。自分もまだ二年生の分際でそんなことを言えた立場かは知らない。

「大口叩く割にシュートの成功率低いな、お前」
試合終了。結局倉間は交代もせず一試合まるまる出場していた。監督も気付いたんだろうか。
「ボールコントロール苦手なんすよ、前から」
「っつーか、まだお前小学生のサッカーしてるよ」
大雑把に言えばその一言で片付く。中学にまだ馴染んですらいない時期だから当たり前ではあるが。
「そりゃそうですよ、まだサッカー部入って間もないんですから。大目に見てください」
「ばぁか、大目にみてたら伸びねぇよ」
もうちょい使える奴にしてやるよ、と小突いたら光栄ですねとやはり生意気な口ぶりで返された。


二軍と倉間と一軍の俺では日常的な練習ではあまり一緒にならなかったが、自主練ではしょっちゅうシュートやドリブルの練習に付き合った。
練習を重ね、日が経つに連れてプレイスタイルはすっかり変化し、まためきめきと上達していき見ているこちらが面白い。
飽きずに面倒を見た結果、入部後二度目の一軍へ上がるテストで見事倉間は他の一年数名と共に合格し、黄色いユニフォームと青い背番号を手にした。
おめでとう、と昇格した倉間に声をかけた時、珍しく素直に「南沢さんのおかげです。ありがとうございました」なんて返してきたものだから少し面食らう。
しかしそのすぐ後に「エースの座奪ってやりますよ」とまた生意気な口を叩く。
今のは照れ隠しだろうか、倉間の性格上簡単に素直にはなれないだろう。これが精精か。
見当が外れているのか当たっているのか、確かめる術などなかった。


一軍に上がって二ヶ月、三年が引退する頃に倉間はスタメンの位置を獲得した。
ポジションはもちろんFW、ツートップを正式に組むことになった初めの試合。
「やっと並べた」
フィールドの真ん中、二人で立つ芝のうえでさも嬉しそうに呟いた。
「俺はアンタの仲間です。でも、・・・ライバルでいたい」
「ライバル?」
「アンタを抜かしてやる」
「・・・はっ、生意気。」
やってみろよと、その瞬間から俺たちはライバルになった。


その感情が異様な変化を遂げ、想いに変わるのはまだもう少し先。



譲れない譲らない僕の居場所






隣は譲らない。
結構長いこと放置してた南倉。まだ恋愛感情ナッシングな二人。
始めは恋愛感情がなくてもそのうちできていくパターンもありじゃないかと。

title:Discolo





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