僕等で起こす奇跡を信じて
(カル渚)
「今日も駄目ですねぇ、二人とも。もっと複雑で予測できない方法を考えないと!!」
暗殺者がターゲットに暗殺のアドバイスを受ける――今僕らはこの上ない矛盾に身を置いている。
「っあーー、ムッカつく。なんで殺す相手に殺し方学んでんだよ」
カルマくんが半笑いで吠えた。
「せんせーは怖くないの?」
僕が聞くとせんせーは緑のシマを浮き上がらせてニヤニヤ笑う。
「怖くありませんねぇ、君達に私は、殺れない」
「それは知ってるよ、僕らの腕前じゃまだ、ね・・・」
「それでは・・・いつかそのような腕前にでもなると?」
「そうじゃなくて。せんせーは、死ぬことが怖くないの?って話」
地球上の誰にも倒せない超生物。
月を7割蒸発させ、来年3月僕らごと地球を破壊する。
生まれも育ちも地球の、最高速度マッハ20の僕らの“せんせー”
生存本能も感情も感性も、僕らと多分そんなに変わらないけど、確実に『欠如』した、僕らと違う部分がある。
命を奪われる瞬間、せんせーは恐怖を感じるの?
でもせんせーはいつもの黄色い顔で笑っただけで答えてはくれなかった。
教室に戻るため二人で歩いていると、ずっと黙っていたカルマくんが口を開いた。
「渚くん死ぬの怖い?」
「・・・・怖い、よ」
じゃなかったら、多分暗殺をこんな頑張ったりしない。
百億貰えなくても死なないけど、暗殺できなかったら死ぬんだ。
「でも死ぬこと自体は一瞬だから、どうかな。痛いのとか、怖いのが嫌だよ」
「死ぬより痛い怖いが上なの?」
「だって、死んじゃったらもう感じたり考えることすらないでしょ?死んだらただお終いなだけ、じゃない」
「じゃあ渚くんは痛くも怖くもなければ死んじゃっていいんだ」
核心を突くようなその言葉は、いつもみたいな怖い笑みを含んでいなくて、思わず地面に落としていた視線を彼に向けた。
少し、怒っているような。悲しんでいるような。
見たこともない微笑みが僕の心臓を抉った。
え、なんで。
なんでカルマくんがそんな顔するの。
「俺死ぬのはやっぱ怖いし、嫌だ。だってやりたい事も知りたい事もあるんだ」
「そりゃ・・・そうだよ・・・」
「それに俺渚くんと一緒にいたい」
「はっ!?」
何を唐突に、何で、ていうかそれそんなに大事な事?
言いたいことが詰まって、言葉にならない。
「だって死んだら渚くんと一緒に居れないじゃん、何にも出来ないじゃん、そんなんやだわ」
「・・・何言ってるの」
「真っ赤だけど?」
図星だ。顔が熱くてしょうがない。
「だから俺せんせー殺すよ」
「そ、だね」
「暗殺、頑張ろうね」
僕等で起こす奇跡を信じて
タイトルに比して薄暗いないような感じがしますがどうでしょうか。
暗殺教室はまりました。渚くん厨でカル渚厨です天使。
実は抉るって単語を使いたかっただけです。
title:銀色懐中時計。