舌に乗せた嘘は苦くて吐きそうだ | ナノ


舌に乗せた嘘は苦くて吐きそうだ



(エスミス)


「愛し合う振りはもうお終いにしよう」

ミストレは狡猾に笑って口元を歪めた。
その言葉の意図することを察する。

「もう君の下手な演技は見飽きたよ」
肩をすくめて空笑い、人を挑発するのは天下一品だ。自覚してやってることも明らかだ。
ただもう俺はそれに慣れ過ぎて、今更どうとも思わない。
「お前の演技も達者なんかじゃ無いけどな」
「うっわ失礼。女の子の前じゃオレって完璧でしょ?」

完璧は何を指してるのか。
『完璧なオレ』か、『完璧なオレを演じてること』か。
どっちにしろ俺にはすぐ見抜けたから取り巻きの女共が盲目なだけだ。

「どこが。完璧なお前なんて見たことねぇよ」
「オレだって人間だもの、完璧っていう演技をしてるに過ぎないけどね」
「知ってる」
決まってそういうと、その顔を歪めて眉をひそめる。
「・・・君のその何もかもわかってる風な素振りがオレは嫌いだね、何もわかっちゃいないくせに」
「そんなつもりねぇぞ?ま、お前よりはわかってるけど」

例えばお前は俺が大嫌いだっていうこととか。
何故愛し合う振りを始めたかとか。

「別に失恋手当てを引き受けてるだけだろ、俺は」

振られた痛みを『愛されている』と感じるために。

「・・・最後に聞きたいんだけど」
「何」
「なんでエスカバは俺の誘いに乗ったわけ?」

『慰めてよ』
この一言が始まりで、俺の終わりだった。

「お前の顔はいいからな、良い思いするチャンスじゃん」
「・・・・っ最っ低」
「お前に言われる筋合いだけは無いわ、人を良い様に使いやがって」
言い返した言葉に気を本格的に悪くしたか、立ち上がって脱ぎ散らかされた軍服の上着を引っつかむ。

「・・・・君とオレはこれからもただのクラスメイトで、チームメイトだ。オレ達の間には何もなかった。いいね?」
「わざわざ言わなくてもいつでもそうだろ」
「これで最後だからね、もう終わり。じゃあね」

そう言って勢いよく部屋から出て行った。

「・・・・終わりも何も、俺ん中じゃ始めから終わってたっつーの」

お前ほんと何にもわかってない。
望みなんか無い男に絶望味わわせやがって、殺してやりたいくらいだ。

どうせ、その程度だ。


舌に乗せた嘘は苦くて吐きそうだ






お題:愛し合う振りはこれで最後にしましょう、あなたの下手な演技はもう見飽きた by詩想
これを基盤に書きました。タイトルは下記より。

ストレス発散の産物、かなり雑。いたたまれなくなったら消します。始めはSSのつもりだった。
実はミストレが好きだったエスカバとそれに微塵も気付かない失恋中ミストレ
気持ちだけ事後・・
殺伐としたエスミスも好きです片想いでも両想いでも!!

title:銀色懐中時計。



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