ここから眺める空が好き。
ここから見える景色は遮るものが何もないから狭くない。目の前に広がる世界は本当にきれいで綺麗で、優しいから好き。

真っ青な雲ひとつない晴天も、ちょっと紫気味になっている朝焼け空も、光が当たるところ全部が橙色で包み込まれる夕焼け空も、きらきらと星が輝く夜空も。
みんなみんな大好き。


だから、できることなら写真みたいに切り取って、ずっと大事に持っておきたいなあ。


なんて言ってみると、私の正面に向かい合うように座った彼女は一瞬、タルトをつつくのをやめる。

私の眼の前にも置かれているタルトも、彼女が食べているタルトも、彼女のお手製らしい。
一口食べてみたところ、すごくおいしかった。今度頼んだらモモンで作ってくれないかな?

動きを止めたのはほんの一瞬で、またすぐに食事を再開された。
彼女は一口、ぱくりと口に入れると、それを味わってから言葉を続けた。


「モミジは、なんというか、……素朴、というのか?」

「ほえ? 素朴?」

「悪い意味ではない。ただ、欲しいものは、という問いに対して空と返ってくるとは思わなかったんだ」


空、か。

表情は大して変わらないのだけど、若干困ったようにそう言うユアさんに、ちょっと苦笑する。
確かに、自分でもちょっとずれた答えだなあとは思っていた。

けど、本当に好きなんだ。


もっと正直に言うなら、今は欲しいものはなかった。


ティナやユアちゃんたちのいるここにいると、いや、ここにいれるなら本当に何もいらないと思えてしまうの。
皆と一緒に居られれば、満足してしまうの。

不思議だね。

そういってタルトを味わいながら笑いかけると、ユアちゃんも同じように優しく笑ってくれた。


「けど、な」

「うん?」

「本当に欲しいものがないならいいんだ。そうじゃないのならば、遠慮しないで言ってくれ」


その方が、私も嬉しいな。


言いつつタルトのお替りをお皿に移して綺麗に食べ始めるユアちゃんは、私の顔をじっと見つめた。
私は困惑しながら、ユアちゃんを見つめ返した。


「遠慮なんて、してないよ?」

「……そうか。なら、いい」

「本当にないんだー。欲しいもの。けど、急にどうしたの?」

「いや、ちょっと我ままを言って欲しくてね」


我ままを言われたい、なんて、相変わらず少し変わっている気がする。

ユアちゃんは、ちらりと私の方を見てから最後の一口を食べる。

音を立てずに静かに置かれたフォーク。それが置かれた皿は綺麗に片づけられていた。

私も、つられる様にフォークをお皿に置く。同じようにお皿は綺麗に片づけられていた。



「ごちそうさまでした!」

「はい、御粗末様でした」


にこっと笑ってそういうと、ユアちゃんも嬉しそうにしてくれて、もっと嬉しくなってくる。

タルトはおいしくて、ユアちゃんと話すのは楽しくて、もっといっぱい話したいこともあって、このままユアちゃんが帰ってしまうのかと考えると少し残念に思えて、


「あ、」

「……どうした?」


片付ける手を止めて、目を合わせてくれる。

一つ、だけ。ちょっとした我まま。


「あの、ね。ひとつだけあったの。我まま」

「うん」

「また一緒にユアちゃんのタルト食べて、一緒におしゃべりしたいの! あと、できればもう少しお話したりしたいなあ、なんて」


ダメかな?

なんて小さく首を傾げる。

ユアちゃんは突然のことだったからか、少しだけ目を瞬かせたが、すぐに優しく笑いかけて、


「そういうの、我ままとは言わないんじゃないか?」


優しく頭を撫でられて、嬉しくなって私も笑顔がこぼれた。


「もう少し、ここにいてもいいか?」

「うん、全然大丈夫だよ! いっぱいお話しようね! あ、ユアちゃんここ座って!」

「ああ」

「じゃあ髪いじらせて!」

「え、」





子よ
君といる時間は、私にとっても大切なのです



(これは、なんというか……)
(どうかした?)
(……いや、次持ってくる菓子、どんなのがいいかと思って)
(あ、今度はモモン味のお菓子がいいなあ!)
(分かった。作ってくるよ(……モミジ楽しそうだし、いいか))



――――――……‥

春風さんに捧げます! そして相互ありがとうございます!
チーム同士の絡みとのことでしたが、登場しているのはモミジちゃんしかいなくって本当にすみませんorz
書くに当たって色々モミジちゃんについて色々考えたのですが、元気で笑顔が似合う明るくって向日葵みたいな子、というイメージが勝手に出来てしまいました。

タイトルは撫で子(ナデシコ)と読みます。
愛撫したくなるほどに愛しい子という意味で、ユアやミナトから見たモミジちゃんとティナくんって言うのは間違いなく無条件で愛でる対象で可愛らしい愛し子。
因みにユアは次会うときはモモンの実を使ったお菓子を何個か作って持ってきます。

こんなんでもいいならもらっていただければ幸いです。

キャラ違う! などありましたら春風さんに限り二十四時間三百六十五日いつでも書き直しを受け付けます!


これからもどうぞ夢見鳥をよろしくお願いいたします。


 
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