現在地は外。ぽつぽつ降ってくる雪がこの寒さを倍増させている気がしてならない。

まあ簡単に状況を説明すると、俺とユアは何時ものように犯人への逮捕と言うなのフルボッコを行って、無事頂いた報奨金のようなもので大量のお菓子類を買い占めて二人で帰っているところであった。

あ、これは当たりだ。かなりおいしい。後でハイネ達の分も買ってこないとなあ。


「それにしても、さっっっむぅぅぅぅぅ!!」

「……ミナトがか?」

「そうそう、俺いつも滑ってばっかで、ってちょっと! ユアひどいな! 外がに決まってるよ!」


表情は変わらないが中々に酷いことを言ってのけているのは俺と並行して歩いているユア。
俺も半袖だから人のこと全然言えないけどノースリーブはちょっと寒過ぎないのだろうか。
そう思って前に一回聞いてみたところ、気合があればどうってことない、と返された。
そこで再認識した。やっぱユアは凄い。何がって、そりゃまあ色々ありますが。


「……ナイスノリツッコミ。ミナトは、もう5レべ位上がったな」

「え、マジで? やった!」

「因みに、最初は−5レべ」

「ひっく! え、何それマイナスってありなの!? ってかじゃあ今通算0レべ!?」

「道のりは長かったな……!」

「結局ゼロだし、ユアの隣にいるだけでかなりの経験値稼げそうだけどね!」

「そんな細かいことより、雪、積もるかな。やっぱり」


そうか、細かいのか。

寒さの所為か若干赤くなっている掌を空へと向けて雪へ手を伸ばすユア。
俺もそれにならって空を見上げる。

雪は降り始めたばかりで、今は止まる気配を見せてくれない。
寒いのは勿論嫌だが、それ以上に雪が積もるという普段ないことへの期待へ比重が大きく傾いていた。


「いいよねー。今からわくわくするね!」

「……いやいや、雪掻きが大変面倒だと思いませんか、ミナト軍曹」

「雪掻きと書いて雪遊びと読むんだよ、ユア二等兵」

「……私は二等兵なのか。そしてミナト軍曹、何故漢字を漢字で読む」

「あ、思い出した! ユア、雪掻きした時途中で飽きて炎で焼き尽くしてたじゃん!」

「やっぱ雪って言ったら、雪遊びだよな」

「自分の都合の悪いことになると聞こえなくなる便利な耳っていいよね!」


私は雪だまを投げあって倒すやつが好きだ。中に色々混ぜたりしてなんでもありなやつ。

そうぽつりと呟いたユア。
一応言っておくけど、相手を倒す事だけを趣旨とした危ない遊びはなかったと思うよ。

そういえば、去年かいつだったかはよく覚えていないが雪が降り積もったとき、ギルドの皆で雪合戦やってあわや大惨事になったよなー。ユアの全力投球が原因で。
それで暫く俺とユアの投げ物禁止令が出されて……、あれ? 今から考えたら俺とばっちりじゃない?


「……なんていうかかなり真っ暗だな」


悶々とした思考を引き戻したのはユアのやけに面倒臭そうな声だった。

思考を戻し、上を見る。
雪は変わらず降っていて、これは間違いなく明日積もると確信した。
そういえば空も黒い。最近じゃ日が落ちるのも早すぎて外へ遊びに行くのも時間が短くなってきたなー、なんて。


「そうだね。ここ街灯無さすぎだと思うよ。」

「こういう時って後ろからサクサク雪を踏む音がするんだよな。私たち以外の」


ふふふ。と声だけ楽しそうに笑うユアが一番の恐怖だと思った俺はきっと悪くない。表情に乏しいって場面によってはある種の恐怖だよね。


「んなわけないって。大体仮に出たところで俺には……」


サクサクサク


「……ユア」

「私じゃない。第一、私はお前の隣にいるだろう」


聞こえてきた一つの足音。後ろに気配はなかった。

万が一の可能性を祈ってユアの顔色を伺うが、さらっと否定してくれた。
少しくらいは気休めになるからせめてもう少し間とか持って欲しいな……!



サクサクサクサク


「「………」」


サクサクサクサクサクサク


途切れない足音。

二人で顔を見合わせる。


ダダダッ!


息を合わせて全力で逃避を決行。振り返る? そんな怖いことできませんでした。


「怖っ……」

「ああああんなの通行人Aかもしれないよ! もう、ユアったら臆病だなー!」

「吃りすぎだ。では何故お前は私と一緒に全力疾走してるんだ」

「いや、実はドラマの再放送がありまして!」

「こんな時間にやってないだろ」


全力ダッシュ。未だに聞こえる後の足音。
なんだこれ、そこらのB級ホラーよりリアルに怖いんですが! どうしようか!


なんとか撒こうと兎に角ユアとともに走る。


「あ、」


それなりの距離を走って漸く足音が聞こえなくなったので安心していたら、ふと思い出した。
出来れば思い出したくなかった類のものを。


「……どうした」

「……財布、お店に置いてきちゃったっ!」

「……ミナト、君のことは忘れない」

「見捨てないでえええ!!」


滅多に見せない綺麗な笑みを浮かべて此方に手を向けて颯爽と去ろうとしたユアをがっしりと逃がさないように捕まえる。


「一緒に行ってください!」

「却下」

「ほら、道程を逆算したら足音の主と会えるよ?」

「いや、ぶっちゃけ私に何の得もない」

「ユアのバカ!! こうなりゃ強行突破だ!」


途端にクエスチョンマークを頭上で浮かすユアのフードを掴む。

それだけで俺がやろうとしていることが分かったようで、直ぐに逃げる体制を整えるユア。
死なば諸共! マジで無理なんだ! 付き合ってください!


「おまっ! 首、首しまってるから!」

「最近有名な新たなダイエット方法なんだよ!」

「アホか!」


珍しく慌てるユアを尻目に、俺はフードはがっしりと掴んだまま店へと向かって走り出したのであった。






結局足音の主はいなくて、それに安心したのも束の間、俺は隣の鬼の恐怖をたっぷりと味わう事になったのはまた別の話し。



――――――……‥

空華様、相互ありがとうございます!
ユアとミナトでギャグ……になっているのかは若干不安がありますが、もらっていただけると有り難いです。

空華様に限り二十四時間書き直しを受け付けます!

これからもどうぞ夢見鳥をよろしくお願いいたします。


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