初めてづくし




そして、


「ユア! あれじゃない? 真珠!」

「……分かりやすいこと、山の如し、」

「ちょ、大丈夫!?」


やはり元気なミナトを尻目に私はダウン寸前だ。疲れた。私、実は今までインドアだったのかもしれん。
もしかしたらポケモンとして長い距離を動くのが初めてだったからかも知れないけど。というか其方の方が可能性高い。


「……帰るか」

「待って! まだ真珠とって無いから!」


うっかりしていた。一番重要な事をせずに帰ってしまったらもう一度やる羽目になる。それだけは勘弁して欲しい。


「頼んだ」

「低いテンションが更に低いね。まあとりあえず俺取ってくるから待ってて」


私とは真逆で元気が有り余っているらしいミナトは私の言葉に頷いた勢いのまま真珠へとかけていった。


「……一応、終わりだよな」


溜息と共に吐き出した言葉は誰の耳にも届かなかった。




―――――……‥




「ありがとうございます! 私、真珠がなくなってからもう落ち着かなくてそこら中ピョンピョン跳ねまくり! おかげで痣だらけでしたよ!」

「えっと、それは大変でしたね」

「……」


バネブーって真珠が無いと色々大変なんだな。始めて知りました。確かにバネブーと言ったら頭の上の真珠だからか。


「これは御礼です!」


苦笑をしながら相槌を打っているミナトに何かを手渡した。


「ええっ! こんなにもらえるんですか!?」

「どうぞどうぞ。真珠に比べたら安いもんですよ!」


目を白黒させて驚いているミナトの手の中にあるものを拝見させてもらう。

「タウリン」、「リゾチウム」、「ブロムヘキシン」、「P2000」。

……真珠の価値、高いな。あれ売ったら幾らするんだろうな。


「凄いよ! 俺ら一気にお金持ちになっちゃったよ!」

「……そうなのか?」


いまいち2000ポケの価値が分からない。あ、ぺラップ。


「二人ともお疲れ様♪」

「ぺラップ!」

「でも、お金は預かっておこう」

「……え゛」

「……」


私達二人が驚いている隙に、と言ったら言葉悪いが、そそくさとお金を分けるぺラップ。


「ほとんどの取り分は親方様の分♪ ……お前達は、これくらいかな?」

「うわっ……」

「……丁度十分の一か」

「少ない、ね」

「ギルドのしきたりだよ! 我慢しな!」


ミナトに手渡されたのは200ポケ。

差が大きすぎるからか、ミナトは若干項垂れている。私はしきたりだの何だのあるなら潔く諦めるとするか、と別段不満はない。

それに、私が今お金貰っても使える自信ないよ。人間だったときの事は覚えていないしな。


チリーン。

綺麗な鈴の音がギルドに響く。どうやらこれが食事の支度が出来たと言う合図らしい。


とりあえず、お腹は空いたので項垂れているミナトの背を軽く叩いて喝を入れて私とミナトも食堂へと向った。


 
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