止まることなく




上がってみるとペラップは左の掲示板の前で立っていた。傍に歩み寄っていくと、口を開いた。


「お前達は初心者だからね。まずはこの仕事をやってもらうよ♪」


どの仕事だ。やっぱり最初だから、簡単なやつが良い。私の実力で何処まで通用するか分からないから試したい。


「まず、最初に。この掲示板には各地のポケモン達の依頼が集まってるんだ。
……最近悪いポケモン達が増えてるのは知ってるよね?」

「……」

「うん。何でも時が狂い始めた影響で悪いポケモン達も増えてるって聞いたよ」

「……時が、狂い始めている、とは?」


時とは、即ち時間。

それが狂うとは、一体全体何が起こっていると言うのだろうか。昨日のあの三下はさて置き、結構平穏そうな雰囲気が流れていたと思うのだが。


「その通り。
時の影響で悪いポケモンが増えてるせいか、この掲示板も最近依頼が増えているんだよ。
また…… これも時の影響なのかどうかはわからないが… 最近各地に広がって来てるのが、不思議のダンジョンだ」


不思議のダンジョン?

妙に冒険の匂いが漂ってくる名前だな。ダンジョンに更に不思議がつくのか。
聞いたことも見たことも無いぞ。


「あ、俺知ってるよ。
昨日俺たちで遺跡のかけらを取り返したでしょ? あの海岸の洞窟。あそこも不思議のダンジョンだったんだよ」

見たことも入った事もあったらしい。知らぬうちに、恐ろしいな。
けどその説明昨日聞いてない。擬人化の序に話しておいて欲しかった。


「……ダンジョン自体、よく分からないのだが… 違いは何だ」

「不思議のダンジョンっていうのは、入る度に地形が変わるし落ちてる道具も変わる。
あと、途中で倒れるとお金とか道具が何故かなくなっちゃう。さらにはダンジョンの外に戻されるって言うホント不思議な場所 ……だけど、」

「……」

「行く度にいつも新しい発見があるから探検するには本当に魅力的な場所だよ!」

「……そうか」


ミナトの目が輝いてる。
あれだ、玩具を出された子供のような反応。おお、何か上手い例えが出せたな。


「よく知ってるじゃないか♪ それなら話は早い。依頼の場所は全て不思議のダンジョンだからな」


どれも一筋縄ではいかない場所で依頼があるのか。色々凄いな。


「さて、ではどの依頼をやってもらおうかな♪」


ペラップは少しの間掲示板を眺めいている姿を私達は眺めていた。
その間、約一名はとてもドキドキした様子だったのが非常に楽しかった。


「うん♪ これがいいかな?」


ぺラップは漸く、決めた一枚の紙を私達の前に突き出した。
突き出された紙をミナトが受け取ったので私はそれを横から覗き込む形で、文字を読む。


「……え、これって」

「要約すると、落し物を取ってきて欲しい、と言うわけだな」


紙に書かれていたのは、バネブーからの真珠探しの依頼。レベルはやはり、簡単なものなのであろう。


「………俺、もっと探検隊っぽい事がしたいよ…」


不満そうな表情のミナトを見て、思わず苦笑する。


「物をなくすのは、辛い事だとお前は昨日よく分かっただろう」

「……うん。すっごいよく分かってるよ。身に染みて分かる」

「じゃ、頑張れ」

「うん!  ……って、あれ? ユアもだよね? ユアも頑張るんだよ?」

「……付き合ってやろう」

「何でだろう。今から先行き不安」

「……わかったら、頑張って仕事に行ってくるんだよ♪」

「あ、了解です!」

「………」


そうか、私達の会話については何も言わないのか。


なんだかんだで、元気よく返事をしたミナトに私の小さな腕を ……今考えたら、何処からが腕で、手なんだ?
……気にしないでおこう。 兎に角、私の手を引いてさっさと歩き出したのである。

と、言うわけでなんだかやけにあっさりと私達の最初の依頼はスタートしたのであった。

 
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