目的見据え




「ここがプクリンのギルド。一人前の探検隊になる為にここで修行するんだよ!」


私とミナトの出会いの場である海岸を離れた所にある高台に上った。此処に至るまでにあったあの階段、寧ろ坂だった。

上りきったそこで私の視界に入ったのは、かなり巨大なプクリンを模った建物だった。


なんていうか、すごい。うん。この一言に尽きるな。

丁度今の時間帯が夕暮れ時ということもあるのか、かがり火で下からライトアップされてるとこがなんとも言いづらい姿を演出している。


……え? 此処本当に正規のギルド?

この際自己主張の激しい悪の総本山でも間違いは無いと思う。
怖い、というよりは不気味といった表現方法が似合いそうだと本心から言いたい。間違いなく正義とは関係がなさそうに見える。


「それじゃあ、ユア、乗るよ!」

「……は?」


何時の間にか原型に戻っていたミナト。揃えて私も原型、ヒトカゲの姿に戻る。

なるほど。理解した。擬人化したときとは逆に戻りたい、と願うだけと。実に分かりやすい仕組みで非常に助かる。

それよりも、乗る?そんな疑問はミナトが前に進み出た時に解決した。
ミナトが一歩踏み込んだ先にあったのは木の様なもので作られた格子の張ってある穴。

……格子が外れたら完全に大怪我……、いや。あまり気にしないでおこう。


『ポケモン発見!! ポケモン発見!!』


ミナトがその格子に乗った瞬間、少し幼い声がミナトの足元、つまりは穴の中から聞えた。


『誰の足形? 誰の足形? 』

『足形はミズゴロウ! 足形はミズゴロウ!』

「わわっ!」

「……」


乗ってたミナトは当然足元から声が聞えてきたのでかなり驚いていた。

それより、私としては何故同じ事を二回も繰り返すのかが不思議で不思議で……。


「うー、我慢。我慢」


かなり驚いた様子のミナトは一瞬身体を後ろの引こうとしていたが、ぎゅっと強く目を瞑り我慢していた。

うん。下から見られるって結構怖いよな。正面からかかってこいって言いたくなるよな。


『………よし。傍にもう一人いるな。お前も乗れ』


ミナトはよし、といわれて直ぐに退くと、今度は先ほどの幼い声と違い、妙に野太い声が聞こえた。

……この流れで行くと、次は私か?
既に格子から離れていたミナトに視線を合わせると、神妙な面持ちで一度、深く頷かれた。


「はあ……」


これ、乗ったら落ちそうで怖いな。

いや、もしかしたら下に居るであろうポケモンに大ダメージを与えられるといった点では良いのかもしれない。
ん?待てよ。それだと自分自身にも大ダメージを食らう羽目になるじゃないか。じゃあ、自分が落ちる代わりにかなりの重石を落とせば……。

おお。良いかもしれない。


「ユア、ユア」

「……どうした?」

「顔、凶悪犯みたいになってる」

「此れは失礼した」


頭のうちで考えている事が表情に出ていたらしい。それにしても、凶悪犯とは酷いな。

ミナトと違い、さっさと終わらせてしまいたい私は大きく一歩踏み出して格子の上に足を乗せた。


『ポケモン発見!! ポケモン発見!!』


再度聞こえてきた幼い声。……からかいたくなるような声だな。


『誰の足形? 誰の足形?』

『足形は、足形は…… エート……』

「……」


手間取っているらしい。

これには思わずミナトとアイコンタクトを交わす。


こういうのって、よくあることなのか?

俺の知る限りだと初めてだけど?

……時間掛かるならここからおりたい。

我慢だよ! 我慢!


『足型は… 足型は…… 多分ヒトカゲ! 多分ヒトカゲ!』

『なんだ多分って! おいディグダ、見張り番なんだからしっかりしろ!』


おいおい。自信ないのかよ。あってるよ。私、今一応ヒトカゲだ。

野太い低い声の方の鋭いツッコミの後に、会話の内容はよく聞こえなかったが弱々しい声で多分反論しているのが聞こえた。

……いい加減におりたいのだが。これ、勝手におりていいのか?


苛々というか、単純に全部が全部面倒になってきてたら、目の前のギルドの門らしい格子がガラガラ上がっていった。

中に入っていい、という事なのだろうか。


「うわー!」


いきなり地面に座り込むミナト。いきなり、なんだ。


「あ、ごめん。驚かせた?」


私が無言で頷くとふにゃりと笑ってみせるミナト。


「ごめんね。緊張してるせいか一々驚きの連続だよ」

「こんなんで一々驚いてたら、探検隊? というものに成った時に困るぞ。いつか様々な遺跡を回るのだろ? そういうのは相応の仕掛けがついて回るものだろう」


取り敢えず己の短い手をフルに使いミナトを立ち上がらせる。


「……うん。そう、だね! よし、行こう!」


私の言葉に気合を入れなおしたのか、ぐぐっと自分の足に力を入れて強く前へ踏み出したミナト。


「………いいな。付き合おう」


なんか、ミナトって見ていて飽きない。くつりと喉を鳴らして笑い、彼の後ろへついていく。


彼の後ろから入って行くと、中には地下へと続く梯子と看板が立っているだけだった。


「こんな所に地下への入口が! こういうところに意外な罠が……!」

「何そのRPG風のコメント! 罠!? それは無いでしょ! 一応ここ正規のギルドだから! ほら、行くよ!」


ミナト、度胸もついたようだけどどんどんツッコミのレベルも上がってきている気がするよ。
まあそれは主に私の所為だから敢えて何も言わない。


やけにあっさりと、梯子を下っていくミナト。私だけ残っているわけにも行かないので一つ、溜息をついてミナトの後を追った。


 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -