売られたものは買うだけです




辿り着いた最深部。そこにはズバットとドガース。先ほどミナトの宝物を持って行った二人だ。


「返して貰いに来たよ!」

「ケッ、やれるもんならやってみな!」

「くっ、」


彼らの勢いに気おされたのか何処か怯えたような表情をし、少しだけ後ろに下がってくるミナト。

手を貸すつもりは無かったのだが、仕方が無い。


「えーい」

「ぐふっ」


気合を入れるために言った言葉。それとほぼ同時にミナトの身体が前へとつんのめった。

今、蛙か何かがつぶれたときのような声が聞えてきたのだが大丈夫だろうか。

因みに、彼が前へ倒れた原因は私の足だ。
あまりにうじうじしている彼がむかついて、とかそういう私情ではなくしっかりとした理由もあった。さっさと殺る気を出して欲しかったんだ。
簡単に言ってしまうと、愛のある喝だ。

威力は先ほど可愛いらしくも私の前に立ちはだかってくれたカラナクシの方々に当てたものと同じ位の強さ。
容赦? そんな失礼な事、私には出来ません。


「〜〜っ、ユア!」


若干涙目になりつつ私を睨みつけてくるミナト。そんな表情で睨まれても、怖さなんて欠片も沸いてこない。


「よし。ではその怒りは奴らにぶつけてこい。私も誠心誠意きっかりきっちり手を抜きながら手を貸してやろう」

「うわー。微妙……」


途端に苦虫を噛み潰したかのような表情を作り出すミナト。
感情表現に多彩なのだな。羨ましい限りだ。


「……おい。お前、さっきいたヒトカゲか?」

「私のことを言っているのか?」

「……男じゃなかったのか」


心底、驚いた。と言う声と表情。

前言撤回、って可能だよな。


「ミナト。奴らは、お前の敵だよな?」

「え? まあ一応はそうなのかな?」

「そう、なんだよな」

「はい! その通りです!」

「そうか」


ミナトの返答に満足げに頷いてみせる。よく理解したぞ。
あいつらは、敵だ。


「おい、やつら。潰すぞ」

「……いえっさー! ボス!」


目の据わっているユア。


ミナトの口からぼそっと呟かれた言葉は聞こえなかったことにしよう。


さて、それじゃあ悪役退治と参りましょうか。



 
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