運命の邂逅




……此処はいったい、どこだろう。波の音が、小さく聞こえてくる。

………あ、駄目だ。……意識が、





―――――――……‥





どれだけ時間が経ったのだろうか。

声が、小さく聞えてくる。声と同じく、ゆっくりと身体をゆすられているのも感じた。
耳に届くその声に聞き覚えは、ない。

いきなり目を開けるには辺りが些か眩しすぎたが、ゆっくりと少しずつ目を開く。


……青い、な。


目を開けて、真っ先にそう思った。それこそ、自然界ではなしえないと思われるような鮮やかな青と橙の色彩が目に飛び込んだ。

そうして惚けながら青色を眺めていると、徐々に覚醒していく意識。

ん? 青い、だと……!


バッと勢いよく身体を起こす。目の前に居たのは、


「あ、目覚めた?」


私を心配そうに見つめていた、ミズゴロウ。ポケモンだ。そしてこのミズゴロウ、見るからに、唯のミズゴロウじゃない。


「でかい」

「は?」

「突然変異かなにかか? 苦労しているな」

「え? 突然変異?」


目の前にいたミズゴロウの大きさは、目線が丁度私と同じくらいだと考えると、体長はおおよそ私と同じ位。
一応とつきそうだが、私は女だ。だが、それ以前に人間なのだ。その私と同じようなサイズとは……。

苦労しているのだろう。きっと。


「えっと? 大丈夫?」

「それは君に言うべきセリフだろう」

「えー……」


私からの生暖かい視線に、若干居心地悪そうに身を捩じらせるミズゴロウ。


「俺は大きくないよ? 寧ろ小さい方だよ、ヒトカゲ君」


今度は私が虚をつかれる番だった。


「ヒトカゲ……、だと?」

「? うん。だって君、どこからどう見てもヒトカゲでしょ?」


その言葉に、もう一度軽く固まってしまう。そして、すぐさま起こした自分の体に目を向ける。

パッと目につくものはオレンジ色。この時点で私が人間という認識は難しい。

加えて身体そのものがオレンジ色のような赤色。伸ばした手は比べようもなく短くて丸みを帯びている。
そして、止めとなったのは炎のようなものがともっている、尻尾。不思議と熱くはなかった。


「嘘、だろ……」


隣で心配そうに私を見るミズゴロウの視線などに全く気付きもせず、私はこの理解し難い状況について必死に考えを出していた。





この時、既に廻りだしていた


運命の歯車


私と彼の大きな冒険は今、確かに幕を開けた


 
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