▼七夕
「今年も雨だったねぇ」
家の縁側に寝そべり、空を見上げながらそう言ったのはリウだ。
そして現在は曇り。見上げた空にはただただどんよりと重たい色をした雲があるばかりだった。
「折角の年に一度の逢瀬なのに……彦星様と織り姫様は無事に会えたんでしょうか」
リウの隣に座ったレンが眉を下げて心配そうに呟くと、リウは寝ていた上半身を起こし、隣のうなだれた頭を軽く撫でてやった。
「わっ」
「なーにそんなにしょげた顔してんだ。大丈夫だよ、その二人なら」
「?何でですか?」
「織り姫と彦星が渡るのは天の川だろ?つまりは星だ。雲の遥か上のな。だから雲が出ていてもあの二人にはお構い無しってこと」
「…!」
みるみる内にレンの顔が輝いていき、思わずリウは吹き出した。
「ま、今頃はオレらに見えないのをイイコトによろしくやってる頃かな」
「?よろしく?」
「リウ、お前レンに何を教えている……?」
突如上から声が降ってきたことに驚いてレンが見上げると、そこには顔に青筋を浮かべ、仁王立ちしたラオンがいた。リウは最初からこの展開を予想していたのか、顔色一つ変えず、否、寧ろさらに笑みを深めてラオンの方を流し見た。
「あはは、何ってナニを」
「これ以上口を開くな!!」
「?」
それから脱兎したリウをラオンが追いかけたのは言うまでも無い。
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