凶器を片手にワルツを踊る



…撃たれた。
笑顔の彼女に、撃たれた。

「…いってぇよ」
「えへへー!カッコイイでしょコレ!」

彼女が振り回しているのはでっかいモデルガンだった。
いきなりBB弾で彼氏の額を撃つとは…なんて酷い彼女だろう?

「ったく…」

おかえしにデコピンすると、彼女はわざとらしく泣き顔になった。

「ひーどーいー!!」
「お前は俺を殺す気か?」
「…なんで?」

無邪気に彼女は訊いてきた。

俺は部屋の隅を無言で指差す。
そこには今まで彼女が俺に向けてきた凶器が積んである。

「…お前、いつか手ェ滑らして俺を殺しそう」

俺はトンカチを手に持った。
男の俺が持っても重く感じるくらいだから、思いきり振り上げれば人くらい殺せそうだ。

「か、なぁ…?」
「刃物類はリアルに怖かったぞ…」

裁ち鋏とかカッターとか、包丁は言うまでもない。
ぶっ刺されそうで本気の戦慄を覚えたのは、思い出したくもない記憶だ。
こうして積んでるままでいい。

「んー、んー…きっと大丈夫だよ〜」
「何で自信満々なんだよ!」

突っ込むと彼女は子供みたいに甲高く笑う。
そしてクルリと一回転して、モデルガンを構えた。

――自分のこめかみに。

「えー?だって…あたしは、」



銃とトンカチと鋏を持って怖がられたので、魔が差しました。


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