Fall Story
「葉っぱの栞か。君らしいな」
広げた頁(ページ)に蔭が射した。
顔を上げなくても、笑った君が頁を覗き込んでいるのが分かった。
「本を読んでたら落ちてきたんだ。綺麗だったから、そのまま」
「ふぅん」
よく図書室にやって来る君だけど、本を読んでいる様子はない。
一体何をしに来るのか…ただ僕と会話して、軽やかに去っていく。
「読書の秋、ってか」
「それ、僕は変だと思うんだよね」
「え?」
「だって、春には春の、夏には夏の、冬には冬のいい所があって…読書し易いとかし難いとか、一概には言えないと思うんだけど」
君は無言だった。
「……変かな?」
「いや?いいと思う」
そうして、君が笑う気配がした。
「私は、君が本を読んでるのを見るのが楽しみだから、さ」
…あぁ、また今日も顔を上げられない。
Fall in Love Story.