「――あぁ、そうかい。それじゃあひとつ、俺の身の上話ってェのを聞かせてやろう。いやなに、そんな大した話じゃあねぇよ。ほんのヒマ潰し程度に聞いてくれて構わねぇ。
昔々あるところに男がいた。…あぁ、そうさ、俺だよ。まぁそう睨むなっての。
あぁ、いや、自分で言うのもなんだが、どこにでもいるただの男だったよ。ただ俺は病的に盗みが――特にスリが得意でね。この町に俺に敵うスリなんていなかったのさ。いや実に羽振りが良かったもんだった。
そんな俺がなんだってェこんな有様になったかってェとだな、まぁ今思い出しても恥ずかしい話だが、スろうとした野郎の、カミさんがよ、そりゃあもう俺好みのべっぴんで……つい、見惚れちまったんだ!ハハハッ、笑えるだろ?…そこは笑ってくれよ嬢ちゃん。
…まぁ、とにかくだ。そのべっぴんな女に見惚れていた俺は人生最初で最後の失敗を犯した。つまりはスリも失敗して捕まって――ご覧の有様よ。
どうだい?少しは退屈しのぎになったかい?」

問われた少女は無言であった。
ただじっと俯いている。

「いやまぁ、気持ちは分かるぜ嬢ちゃん。俺だってどうせこうして残されるんなら、もっと自由に――そう、首に縄ついててもいいから歩き回りたいもんだが、――あぁいや、別にもう誰かの財布をスれるワケでもねぇんだが…ここは如何せん退屈だしな」

ギィ、と縄が木の枝を削って軋む音がする。

「だからさァ、嬢ちゃんよ。
もう落ちちまった体ばっかり見てたってどうにもならねぇのよ。あんなグチャグチャじゃ見てて悲しいだけだ。…あぁ、そう睨むなってば。ホラ、まずは気持ちを整理してみようぜ。
例えば…どうして嬢ちゃんが首をくくられるハメになったのか話してみるとか」

そう言ってとうの昔に首をくくられた男は、死に様の恐ろしい表情で笑い、新参者の少女の返答を待った。


首吊り男の一生


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