ある日の夜、鬼道の携帯が鳴った。

画面を見ればそこには鬼道の恋人『着信:花子』の文字、花子は帝国の頃からの鬼道の恋人…まぁ今は鬼道が雷門に転校してしまい少し遠距離恋愛のようになってはいるが。

しかし遠距離恋愛とはいっても彼女は控えめな性格、あまり自分から連絡をとってくるタイプではない、珍しいな…。鬼道はふとそう思った。


ピッ


少し心配ではあったが恋人からの連絡だ、嬉しくない訳がない。

嬉しさが声に現れるのを押さえつつ鬼道は電話に出た。


「もしもし、花子か?」


『…鬼道くん?』


…心なしか花子の声が暗い。
鬼道はふと不安になった。まさか自分が居なくなった帝国で彼女に何かあったのだろうか?
少しの沈黙の後、また電話の向こうから花子の声がした。


『…鬼道くんさ、今日…何してた…?』


「…今日?今日の放課後か?」

『…うん。』


花子の質問の仕方に少し疑問を持ちつつ鬼道は答える。


「今日の放課後はいつも通り皆でサッカーの練習を『嘘だよ。』…え?」


今日の放課後を思い出しつつ答えるとふいに花子が少し大きめな声で鬼道の答えを遮った。


「花子一体何を、『ねぇどうして嘘つくの鬼道くん。ねぇどうしてなの?あのね、私ね鬼道くんに内緒で会いに行ってビックリさせてやろうなんて馬鹿な考えちゃったんだ!ごめんね、こんなことで電話なんかしちゃって、でも私鬼道くんのこと好きだし我慢できなかったんだ。鬼道くんも私のこと好きって言ってくれたよね?今日一緒に居たあの女に唆されて一瞬間違った方向に考えが向いちゃっただけだよね、そうに決まってるよね、うん、じゃあやっぱりあの女が悪いんだね!』



彼女の性格からは到底考えられない量の言葉が電話口から立て続けにあふれ出た。

一体何が起きた、どうしたんだ花子は、あの女とは?混乱する中鬼道は考えた、そういえばサッカーの練習が終わった後妹である春奈を家まで送った。

つまり、花子は、春奈を、浮気相手と勘違い、した?


『ッ…ご、ごめんね鬼道くん!私急に沢山話しちゃって…ビックリしたよね?』


言いたい事を全て言い終わったのだろうか、花子の声が、少しいつもの調子に戻った。


「あ、あぁ…少しだけ、な。」

『でもね、鬼道くん…私あんな女要らないと思うの。』


「…え?」


『だって鬼道くんの事誑かして…許せないもん…。』



…ミシリ、と電話口から聞こえた気がした。

彼女は今とても正常とは言えない、どうかしてる。
とりあえず今は彼女の誤解を解かないと、自分の妹が危険な目に会う気が、鬼道はした。


「い、いもうと、だ!」



『…え?』


「今日俺が一緒にいたのは俺の妹だ。春奈と、言う。」


『…嘘、だって私鬼道くんの妹なんて…知らない。』


「孤児院で離れ離れになったんだ。…そして雷門で再会した。」


『…本当…?』


「あぁ、時期に花子にも紹介しようと思っていた。」



『…。』



しばらくの間が空く。



『…そう、なんだ…。』


「あ、あぁ!…信じてくれるか?」


『ち、違うの!鬼道くんの言葉を疑ったワケじゃないの!ただ…その、私ったら勘違いで鬼道くんにこんな電話までしちゃって…ご、ごめんね…?』


「…いや、解ってくれれば良いんだ。」


『ふふ、鬼道くんが浮気なんてする訳ないのにね!』



花子の声がいつもの明るい声に戻った、どうやら今日の放課後のことを理解したようだ。

しばらく恋人らしい会話が続き、ふと鬼道が時計を見ると時計の針はもう深夜を指していた。


「花子、もう遅い。学校もあるし休んだ方が良いんじゃないか?」


『あ…本当だ。もうこんな時間…、ごめんね?遅くまで。』


「いや、俺は別に…。」


『…優しいね、鬼道くんのそういう所…好きだよ。』


「…俺もだ。」


じゃあまた連絡する、と鬼道が電話を切ろうとすると花子が『あ、そうだ鬼道くん』声を上げた。


「?、どうかしたか『あんまり妹だからって仲良くしないでね?…私…ナニするか解らないから』…。」



ブツリ、電話が切れた。
プー、プー、と電話口から虚しい音が聞こえる。


…鬼道は冷たい何かを背中に感じながら静かに電話を切った。



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