おなまえはぼくよりも美しい。蒼い瞳はまるで海の奥底。3秒みつめれば石になってしまうように、彼女の瞳をみつめてしまうと深海へひきずりこまれ、息を失い、体内の臓器が潰れてしまうような感覚に陥る。じつにばかげたはなしだ、と僕を笑った男はなんにんも彼女の虜になってしまったようだ。そうして僕もそのひとりである。今日も呑気にへへら笑う彼女をみてぼくよりも美しい美貌に怒りがこみあげるのだろう。けれども今日はなにやらおなまえが興味津々に僕の常に所持している手配書を眺めているものだからあれれと僕の頭のなかはクエスチョンマークが浮かんでいた。「おい、おなまえなにしてるんだ」そう声をかければ彼女はびくりと肩を鳴らして、やばいまずい、といった顔を見せる。僕は半ば必死になって彼女の手の先を凝視した。「おまえ」僕のなかの怒りが頭にまで達したようだ。ちがうんですこれは、と大量の冷や汗をかきはじめる女にぼくは「なにがちがうんだ」とさも冷静に答えてやる。「そいつに惚れたのか」彼女に一切の言葉を言わせずぼくはそう口走っていた。ただすこしどんなひとなのか一目みておきたかったのです。おなまえは観念したように小さな声で好奇心を口にした。ぼくは吃驚するとともにおなまえが他の男に興味を示したことに更に怒りがこみあげてくるのだ。どうしてだ。他の女たちは僕の美貌に倒れ、恋をしてしまうのにどうして彼女だけは僕にめろめろにならないのか、と。あのキャンディッシュさま。ぼくが頭を抱えていれば、彼女は小さな声でぼくの名前を呼んだ。
「そんなに見つめられたら、どきどきしてしまいます」
気づけば彼女に関する迷信をも忘れ見つめてしまっていたようだ。ぼくに押し付けるように手配書を渡され、その白い頬をまるで薔薇のように真っ赤に染め、逃げていってしまった。どうやらぼくは石になってしまったらしい。
@Cavendish.0520

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