犠牲者三人目 [ 6/7 ]
「間宮はチョロかったけど、後の二人は面倒だよなー」
「殴られたいのかお前」昼休み、はじめ達三人は集まって昼ご飯を食べていた。先ほど橘からもらった(奪った)唐揚げを頬張りながら、椅子に胡坐をする姿に、間宮は眉間にしわを寄せる
「森近は生粋の不良で有名だから分かるけど、野々原は何で?女子に結構人気で、優しいって聞いたけど」
橘の意外そうな言葉にはじめは一瞬目を泳がせたが、すぐに元に戻る。そして大きくため息を吐いて間宮の肩に顔を乗せる。間宮はといえば顔を真っ赤にしてあたふたしている。それを無視してはじめは橘を見つめた
「野々原は元陸上部なんだわ。しかも、中学三年間補欠組」
「補欠?普通運動系の部活って三年でレギュラーになれるんじゃないの?」
「……普通は、な」
普段のはじめとはうって変って、静かに窓の外を眺めていた
数秒後に教室のドアが思いっきり開けられる。強く開けられた所為で大きな音が教室中に響く。中にいた生徒が驚いてその先を見ると、そこには森近がいた
「椎名ァァァ!!!テメェ俺の机一面に落書きしやがったなァァァ!!?」
「お前…」「椎名さん…」
「一面に陸上って書いてやった」
ごめんごめんと笑顔で森近に手を振るはじめを、森近は今にも襲いかかりそうな形相で見つめる
「森近君は橘君と違って完璧な不良だからなー。強行手段で無理矢理勧誘することにした」
「俺の時も中々強行だった気がするんだが…ちなみにどんな手を使うんだ?」
「もっちーは馬鹿らしいから、
テストの下に入部届けを二重にして署名させるとか考えてる」
「椎名、それは犯罪だ」しばらく三人で口論し、その間青筋を立てる森近を完全に無視していた
そして話がまとまったのか、三人とも森近を見つめる
「やっぱりもっちーの馬鹿加減に免じてテスト二重作戦にすることにしたわ」
「よし表出ろお前ら」***
放課後いつもと同じく数学準備室の長椅子に座り橘の作ったシュークリームを食べる。そこに職員会議の終わった笹川が部屋に入って来るなり大きなため息を吐く。
「毎日放課後にここに来てお前ら青春してねぇよな」
「だって部員5人そろわないと部活できなもん。私入れてもまだ三人だし。
つかうめぇなコレ、女子力ハンパネェ」
「…いや、俺まだ入部ってきめたわけじ「ということはあと二人か…面倒だな」
あ、無視?無視なの?」
「まぁ、入学して二週間足らずで二人捕まえただけでも見事なもんだけどな。…で、次は森近から捕まえるのか?」
「野々原は最後のほうがいいじゃん、絶対面倒な事になるし」
シュークリームの最後の一口を頬張りながら呟くはじめの言葉に、笹川は視線をそらす事しかしなかった。
「というか、森近は悪い噂しか聞いたことがないが……大丈夫なのか?」
間宮が心配そうにはじめを見るが、はじめは間宮ににやついた笑みを返す
「悪い噂ほど、案外悪くないもんなんだよ?」
その言葉に橘と間宮は怪訝な顔をするばかりだったが、笹川は傍で煙草を吸いながら鼻で笑った。
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