実はそうだった [ 7/7 ]

「森近良。身長175センチで中学はほとんど不登校状態。のため、偏差値が比較的低いこの高校でも猛勉強して合格に成功。最近は授業に出る気配もなく柄の悪い上級生やら同学年とつるんでいる姿を目撃されている。…ちなみに趣味は裁縫。なにコレギャップ萌え?」「俺の時もそうだったけどその情報はどこから…?」「聞くな橘。聞いたら何かが終わるぞ」


はじめ達三人は放課後の校門の前で森近を待っていた
まずは森近の事を知っておこう、というはじめの提案からである


「でも森近を知ってどうするの?まず勧誘とかするでしょ普通」

「甘いな橘君。弱みを見つけるに決まってるじゃなーい」

「なんで森近に対する勧誘が全部斜め上の強硬手段なの」


はじめは橘に文句を言おうと口を尖らせるが、その時に下校中の生徒達の中で一際不機嫌な表情の森近を見つけると、橘と間宮の頭を両手で思いっきり下げる。


「図体馬鹿にでかいんだからもっと屈め!追いかけるよー!」


どこか生き生きとしたはじめの声に、二人は同時に溜息を出す






*****





森近は見た目は茶髪の三白眼だからこそ不良に見えるが、彼の下校時の行動は普通の一般人らしく、途中にコンビニで買い物を済まし、そのまま歩きながら下校しているだけだった


「つまらん、実につまらんぞ、もっちー」

「まぁ、確かにな…不良だと聞いていたが、案外普通だな」

「あ、二人とも!森近神社の前で止まった!」


橘の小さな声に従うように口を閉ざして森近を見れば、何やら周りを注意深く見ていた。――そして安堵したような溜息を出して、そのまま神社の奥へはいっていく


「まさかもっちー……墓石泥棒か!?」「神社に墓はないぞ」


まるで探偵にでもなったかの様に顎に手を添えて、「私の頭脳が疼き出す」などと意味の分からない事を言いながら、森近の入って行った神社に向かって走り出す


「ちょ!椎名さんバレるって!」

「椎名!お前の探偵魂はそんなものなのか!?」「間宮悪ノリはやめろ!」

「きっと神社に麻薬とか墓石とか引ったくりの品とか隠してるんだぜ!」「うん墓石以外は凄くリアリティあるね!」


はじめの後ろについてこちらも走っているが、何故か追いつけない


(っていうか、椎名さん足早ッ!?)


あちらは普通に走っているだけなのだろうが、間宮と橘は息を切らしながら走っている
ようやく追いついたと思えば、はじめは立ち止っていた


「し、椎名さんどうしたの?」


息を切らしながら橘が問いかけるが、はじめは林の先の方を見て硬直しているらしい
間宮と橘も不思議そうにはじめの見る場所を見て


そして、硬直した。





「おーよしよし!んな慌てなくても猫缶は逃げねぇよ、可愛いやつめー!」




そこには森近が猫に囲まれていた
森近は見たこともない甘い表情で猫たちを撫でまくっている。猫たちも森近に懐いているのか、体をすりつけながら甘えていた。

はじめは次第に体を震わせて、しばらくは体をねじらせて笑いを収めようとしていたが、それも成功しなかったのか最終的に思いっきり吹き出す。


「ブァッハハハハハ!!!ハ、ハハハ!も、もももももっち、もっちーマジ、ギャ、ギャップが!!アッハハハハハ!!!」


女子力の欠片もなく笑う姿はいっそ清々しい。その笑い声に森近は気づいたのかこちらを見て、そして今度は森近が硬直する番だ


「椎名さん落ち着いて、…お、おお落ち着いてあげて!森近可哀そうだから!!もうなんか白目向いてるから!!!

「お前には善意はないのか!?見ろ森近を!プライドをズタズタにされて最早しかばn「お前らが黙れやァアァァァアアアア!!!!!」


ようやく事を理解した森近は真っ赤になりながら叫ぶ。はじめはまだ笑いが収まらないのか腹を抱えてそのまま座り込んでいる。何とか森近を慰めようと間宮とアイコンタクトを取るが、完全に無視された(責任放棄)


「あーっはは、いやー、相変わらずの事で、「良ちゃん」」


はじめの発した、名前に、橘と間宮は固まる。それは呼ばれた方も同じなのだが、違う所はそれから森近が下から上へ眉間にしわを寄せてはじめを見始める事だ


「あーーーーー!!!」


いきなり大声を出した森近は、信じられないものでも見ているかのようにはじめを指差す
橘と間宮はいきなり声を出した森近に驚き、そして指差されているはじめを見る



「お前!はじめか!「あの」はじめか!?」

「普通一目で気づかないかなぁ、今更ってひどいー」


どうやら、森近とはじめは知り合いらしい
その事は二人にも理解できた。


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