vrai visage7
「それで、どうするんだい」
んん、と伸びをして、折原君はそう問いかけてきた。
「何が?」 「俺の告白。もう何回目か解らないけど、返事は?」 「……もう、したつもりだったんだけど…」 「俺はされた覚えないよ」
ニヤニヤと笑う。 解ってる。きちんと答えろって事でしょ。 …『好き』って、言えってことでしょ。 私ははぁと溜め息をついて、一言。
「前々から思ってたけどね」 「何だい?」 「折原君はあまり性格がよくない」 「そりゃどうも」
痛くもかゆくもない、といった風に首をすくめて受け流す折原君。 なんだか悔しくて、私は掴んだままだった腕をぐいっと更に引き寄せ―、 近くなった折原君の耳元で、囁いた。
「臨也くん、ありがとう。―大好き」
―翌日。
「架月〜」 「なに?」
傷も早々と癒え、翌日普通に登校することができた。 幸運な事に、顔に目立つ傷は無い。この程度なら、友達にも全然気付かれ無さそうだ。
案の定近づいてきた友達も、かすり傷に怪訝な顔をしたものの、特に気にする様子もなく、ただ昨日のことをたずねてきた。
「昨日の呼び出し、どうだった?何の用事?」 「ああ、んーとね、告白」 「え!?」
私はニコリと笑い、声を小さくしてね、と口元に指を当てる。
「こ、告白って、誰から?」 「折原君」 「…あ、ああ、折原君かぁ、なんだぁ。改めて告白してきたんだ、本気だったんだね、やっぱり。架月かっこいいし、好きになるのもわかるわー」 「かっこよくないよ」 「あははっ、またまたー。あ、それで、返事は?何て言ったの?また断った?」 「んー?」
相手の言葉を楽しむように、目を閉じて笑みを作る。
―願わくば、今、ちゃんと心から笑えていますように。
fin
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