vrai visage1


「ねえ、俺、君のこと好きなんだよ」

―ああもう、うるさい。

「ちょっとくらいこっち向いてくれたっていいんじゃない?」

うるさいうるさい。

「ねえねえ、架月ちゃん。聞いてる?」
「うるさいってば!話しかけてくるな!」







―私には悩みがある。
それは、感情が上手くコントロールできないこと。

私は昔から意地っ張りだった。
周りに頼られるのは嬉しかったし、期待に応えたいと一生懸命だった。
みんなが困っているとき、「やっぱり架月ちゃんは頼りになるなぁ」って言われるようなそんな存在になりたかった。
そうじゃなかったから。なりたいと思った。
だから、少しでも理想に近づこうって、躍起になって。
そうやって本当の自分を隠し続けるうちに、距離が出来てしまった。

寂しがりで、不器用で、自分に自信が持てなくて、だけどそんな存在を認めて貰いたいと思ってる――そんな、本当の自分と。

謙遜とかそんなんじゃなく、見た目は本当に可愛く出来てはいない。
だけど割と異性に告白されたのは、きっと私が理想を追い求める思いが強かったから。
私の演技力があったから。

だからよく、

『架月ちゃんの強くてまっすぐで、頼りになるところが好きなんだ』

そう言われた。

別に告白されるのは人並みには嬉しい。
好かれて嫌な気分になる人間はそうそういないだろう。
だけど私は、今の私を認めてくれる人に、頭を下げ続けてきた。


―結局は、過去の自分を…誰にも見せない、見せたくないありのままの自分を、認めてくれる人を探しているんだ。



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