愛執染着
ピチピチピチ……―― そんな小鳥の鳴き声を聞きながら、私は起き上がった。 ぼおっとする頭を整理し、目を開くと―、
「やあ、おはよう」 「…………ッ!?」
私の知る中で最も危険な情報屋、折原臨也がそこにいた。 そこ、とは…… ベットの上。 私が寝ている、ベットの上に臨也さんがいた。
「いいい臨也さんっ!?―なんでここに…!!」
慌てながら言う私に対し、臨也さんはとても楽しそうに、
「まあ落ち着いて。お茶でも飲もうよ」
と湯のみを差し出してきた。
「え……。てかどこから湯のみ…」 「気にしない気にしない。ほら、あったかいうちに飲んじゃって」 「は、はぁ…。―頂きます…」
臨也さんの手から湯のみを受け取り、ズズ、と一口。 ―あ、あったかい………。 ・・・。
――ってそうじゃなくて!!
「なんでここにいるんですか!?こんな朝早くから…」 「朝早く、って…。もう10時だよ?」 「え?」
ホラ、と見せてきた時計には、デジタル表記で『10:00』とあった。
「嘘………。寝過ごした…」 「ねー。いつもはとっくに窓開いてるのに、おかしいなーって思って来ちゃった」
――え? 、、、、 いつもは?
「ってことは毎日来てるんですか!?」 「? そうだけど?」
何を今更。もしかして気付いてなかったの? そんな目をする臨也さん。
「………」
すみませーん! ここにストーカーがいるんですけどー! 私は深い溜め息をつきながら、あるであろう用件を聞いた。
「で、何しに来たんですか…?」 「だから、起こすために」
―は……?
「しかし最近の家って物騒だよねー。鍵穴、もっと複雑なのにすればいいのに。10秒で開いちゃった。まぁシズちゃんなら2秒もかからないんだろうけど…」 「ちょ、ちょ、何やってるんですか!!」
ありえない、この人マジでストーカーだ…。てか新羅さんみたい…。 ―その行為、知り合いじゃなければ即警察行きですからね!? ―…まぁ、知り合いでも警察に突き出したいけど…。
「……はぁ…。本当に何なんですかもう……」 「何なの、って言われてもねぇ。俺だってわかんないし」
ふぅ、と息を吐く臨也さん。
「ただね、さっき寝顔見てて思ったんだけど…」 「寝顔見たんですか!?」 「見たけど?」
…ああもう…。 この人の純粋そうな目を見ると、怒る気力も無くなるわ…。
「で、思ったんだけど、
――俺、架月のこと好きみたい」
「――――」 「俺は人を平等に愛してるけど、君は何か特別なんだよね」
そして彼は私の頬に手を添える。 彼の無垢な瞳に、驚いた私の姿が映るのが見えた。
fin
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