05 広まった関係


ある程度臨也さんから離れたところで、池袋駅に行くことにした。

「じゃ、切符代よろしく☆」
「え゛……。尋子、お金持ってないの…?」
「うん」

うおこいつあっさり頷きましたよ!
トリップしたてだから仕方ないとは思うけれど…。
さっきご飯もついでにって言ったら頷いたよね?

「勿論全ておごってもらうつもりだから」
「うわっ…」

別にそんくらいいいっちゃいいけどさー…。

「ほら、何ていうの、もう少し遠慮とか…ね?若干は感じな」
「遠慮?何それ?おいしいの?」
「ウン、もういいです」

何度その台詞を聞いたんだろう。
溜め息をつきつつ切符を二人分買い、ホームへ。

―そして着きました池袋!

「うし、じゃあどこいこっか。バイト…バイト…」
「うーむ…」

ぶらぶらしながら考えこむ。―その時、

「あっれ、浩香ちゃんじゃん」
「っえ?」

不意に声をかけられる。その口調と声で判断し、さっきとは正反対の行動をとった。

「―っ狩沢さん!」
「やほー」
「ちゃっす浩香ちゃん。俺らもいるっすよ」
「よぉ。何やってんだ?」
「遊馬崎さんに門田さん!」
「おー…!」

ワゴン組と遭遇。なんか頼れる人達きたこれ。

「…あれ?その子は?友達?」
「あ」

狩沢さんに聞かれ、尋子の存在を思い出し、紹介する。

「この子は足立尋子ちゃんです。友達で、一緒の家に住むことになって…」
「あ、ども。足立です」
「私は狩沢絵理華。浩香ちゃんのお友達だよー。よろしくね」
「あ、俺は遊馬崎ウォーカーっす。2次元的な出来事があればいつでもカモンっすよ」
「あるわけねぇだろ。―俺は門田京平だ。よろしくな」
「ハイ…よろしくお願いします」

ああなんか、昔の自分思い出すなぁ…。
紹介攻めにあう尋子ちゃんにかつての自分を重ねる。

「それで?どうしたんだ、こんなとこで」

門田さんに問われ、自らの目的を思い出した。

「あ、この子のバイト先を探してて…」
「バイト?」
「はい」

ふむ、と考える門田さん。
すると狩沢さんが、あ!と声を上げた。

「どうしました?」
「確かジュンク堂がバイト募集やってたはずだよ!ねえ、ゆまっち」
「そうっすね!最近そこでバイトやってた子がなんか、辻斬り事件に巻き込まれたらしくて、いないんすよ」

辻斬り事件…?

「そんなんありましたっけ…?」
「お前はニュースを見てないのか…」

ちょ!溜め息混じりにいわないで下さいよ!

「クリスマスにどこぞのカップルが斬られたらしい。
人斬りについてはそれより随分前にあったらしいが、それはなかったことにされたんだが、
今回の件でその人斬り事件が小さいことで収まることじゃなくなった、っていうのだ」

…なんかそんなんあったよーな、なかったよーな…。

「ま、その事件の所為でその店員さんがいなくなったんですよね。―じゃ、いいや。オレそこ行く」

辻斬り事件の話で頭もっていかれそうになったけど、今の尋子さんの言葉で我に返った。

「え!?そこ行くの!?」
「ダメか?つか決定権オレにあんだろ。オレにも社会権をくれ。社会権」

社会権って、そういうものだったっけ…?

「―浩香ちゃん、場所分かる?ジュンク堂の」
「…え?―あ、うん。ジュンク堂なら―」

「送ってってやろうか?」

「「……………………………………」」
「沈黙長すぎだろ!」
「だって、ねぇ…?」
「なぁ…」

門田さんが急に変なこと言い出すんだもん。

「でもいいんじゃない!車に乗ってく方が疲れないし!―構わないよね、渡草っち?」

狩沢さんがバンに乗ってる渡草さんに話しかけた。
いたんだ渡草さんとか思ってない、思ってないよ。

「誘拐するわけじゃねぇならな」
「やだな渡草っちー。私らはともかく、ドタチンがそんなことするわけないじゃん?」
「その言い分もどうかと思うが…」
「まっ、大丈夫ってことで、ヒァウィーゴーっすよ」

遊馬崎産の笑みにのせられて、結局私らは車に乗せてってもらうことになった。
向かうはジュンク堂。

私も実は初めて乗って、…意外と渡草さんは安全運転なのが分かった。


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