好きって言ってください銀さん


「銀さん銀さん。依頼持ってきたよ」
「何だと!?」

ガバッと布団から飛び起き、嬉しそうな顔をこちらに向ける。
両目の奥には金とご飯が手を繋いで踊っている風景が浮かんでいた。

「お前いっつも楽で報酬のいい仕事取り付けてきてくれるもんなァ、いやほんと、器量良くねェけど万事屋の第二メンバーっつーか?妹分だと思ってるよマジで」
「おい何さらっと悪口挟んでるんだ」
「空耳だろ」

言い間違いと主張する気もないようで、適当なことを言って話を終わらせてくる。
この人一回殴ってもいいかな。

「んなことより依頼だ依頼」
「はいはい。でもまぁ銀さんの言う通り簡単で報酬のいい仕事だよ」
「グッジョブ。礼として欠野アナのフィギュアの包装紙をやろう」
「ただのゴミ処理じゃねーかふざけんな」

ていうかいい歳して実在の人間のフィギュアとか買ってるな恥ずかしい。
という台詞は心の中にしまっておき。

私はその依頼の内容を、口にした。

「依頼人はなんとこの私!ねえ銀さん、好きって言って」
「じゃおやすみ」
「ちょっとォォォ!!!」

一瞬にして布団に逆戻りする銀さん。
正直速すぎて見えなかった。
奥深くに潜り込もうとする銀さんを、布団の上から乗り上げバシバシと叩く。

初めはガン無視だったが、だんだん力を込めるにつれ痛くなったのか鬱陶しくなったのか、

「あーーーもうバシバシバシバシうぜぇ!!」
「ぎゃあああす!!」

布団越しに蹴りを入れられた。
年頃の娘になんてことを!

「あァ!?好きって言えって!?新八にでも言わせとけ、きっと照れながら絞り出すように言ってくれらァ!」
「ぱちくんじゃなくて銀さんがいーの!」
「誰が言うかァァァ!大体ね、そういうのは言えって言われて言うもんじゃないの、言いたくなったら自然と口をつくもんなの!つまり言わないってことは銀さんそんなこと微塵も」
「はい黙れェェ!仮にも一度告った相手にそういうこと言うんじゃありませんんん!」
「その話を掘り返すんじゃねェェ!つうかフッといて何言わせてんの!?」
「昔の話だもん」

ぺろっと舌を出すと、そのタイミングで頭を叩かれたので舌を思いっきり噛んでしまった。
いったァァ!?なにすんじゃボケ!!

「つーかマジでなんなの?依頼かと思って喜んでりゃあ意味わかんねェこと言いやがってよォ」
「だって依頼って言わなきゃ言ってくれないでしょ」
「言って欲しいのかよ?なに?手ェ握って身体引き寄せて耳元で囁いて欲しいのかって……オイ、何顔伏せてんだ」
「いや何でも!?想像して恥ずかしくなんてなってませんし!?」
「…お前マジでどうしちゃったの?」

軽く引いたようにそう聞かれる。
それで二重の意味で恥ずかしくなって、片腕で顔を隠した。

「……なんでもないです」

少しくらい。
こんな依頼すれば、またこっち見てくれるかな、とか。
私のことをまた、とか。
今度は私と銀さんの想いの時間が合うかな、とか。

あわよくばって期待してた自分が恥ずかしい。

銀さんがため息をついた。
見てはないけど気配、音で分かる。
ため息をつきながらこっちへ来て、隠してる私の腕をそのまま持ち、

「すきだ」
「っ…!?」

たったそれだけ小声で言うと、あーー!とまた無駄に叫んで、

「おい祐季。飯」
「…は?」
「腹減ったからなんか作れ」
「…え、いや、いやいやあの、銀さん今」
「つっても冷蔵庫なんもねェか。神楽あんにゃろ食べ物と見りゃ平らげやがって」
「銀さん今言った?私に好きだって言った?ね、ねぇ、それってどういう」
「飯食いに行く?」

背中を見せて不器用にそう尋ねる銀さん。
それだけで色んなことが伝わって、とりあえず。

「…うんっ!」

今焦らずとも、やがて気持ちは確かめ合えられると分かり、私は一足先に幸せを味わっていた。


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