好きって言ってください土方さん


「土方さん。好きって言ってください」
「仕事しろ殴るぞ」
「………」

言った途端、予想以上に手厳しい反応。
照れとかを一切見せず言うところが土方さんらしい。

いやいやおいおい。待て待てと。
私彼女だぜ?土方十四郎さんの彼女さんだぜ?
別にそんくらいいいんじゃないの!!

「土方さんん!好きって言ってくださいよォォ」
「うるせェ黙れ大人しくしてろ」
「彼女に掛けるとは思えないお言葉!!」

さっきから1時間くらい書面とにらめっこしてるのは知ってるけどさぁ。
もうちょっと彼女に構っておくれよ!!

「だって土方さんそれ悩んだって仕方ないやーつですよ?気分転換に彼女といちゃいちゃしましょーってば!」
「お前となんざいちゃいちゃしたことねェよバカ」
「あっ酷い!今酷いこと言った!土方さん私おこですよ!」
「知るか。…でもまぁ、根詰めたって仕方ねェこたァ解ってる。休憩すっか」
「!でしょっ、だから私と!」
「しねェっての」
「えーひど、ってうわあ、っぷ!?」

抗議しようと頬を膨らませると、いきなり土方さんが私の方向に倒れ込んできた。
土方さんの隣で正座していたため、上半身に重みがかかりあっさりと私も仰向けに倒れる。
ぐえぇっ重い、と声を上げると色気ねェ声出すなと呆れられた。

そんなこと言われても。
こんな女を選んだのは貴方ですよ?

でもこれで構って貰えた気がして、更に口元が緩む。

「何ですか土方さん、いちゃいちゃしたことないとか言って、してるじゃないですか」
「あァ?こんなんいちゃいちゃに入んねェだろ。ただの休憩だ」
「!」

それはさ。
なんでもなくても、こうして甘えてくれるってことですかね。
そう思うとやっぱり嬉しくて。

しらーっとした土方さんの顔をえいえいと引っ張り、こんなこと出来る人間は私しかいないのだとか思って、また笑みを抑えられなくて。

「あーー。すげェ楽」
「そおですか?」
「お前の心音、心地いい」
「…なんか恥ずかしいな」

目を閉じた土方さんの額を軽く撫で、気持ちよさからか欠伸をこぼすのを見て、私もつられて一つ、欠伸をする。

時間はまったり、ゆったりしてて、静かに過ぎていく感じがした。

ごろりと転がって体勢を整えて、土方さんはもひとつ欠伸と共に言う。

「お前いつもうるせぇしうぜぇしうっとおしいけど、こういう時間は好きだ」
「ワァ、罵倒のカーテンに隠れて折角の告白がよく見えないんですけど」
「妙な喩えすんな!好きっつってんだからいいだろーが」
「うふふ、ちゃんと私の話聞いてくれてるところが大好きです」
「うるせぇ…」

照れたように顔を隠す。

ああだから、好きなんだって、そういうところ。
可愛くて仕方ないよ。

「疲れた眠ィ……10分……」
「はい、りょーかいです」

寝るから10分後に起こせと。
いや私も倒れたまんまの体勢なんだけどね?
足痛くて寝れそうにないや。

だから土方さん。
10分後、楽しみにしてます。
あなたの声が、聞けるまで。

「おやすみなさい土方さん。また好きって言って下さいね」
「…気が向いたらな」
「それで十分です」

焦らなくても大丈夫。
土方さんは"気を向けてくれる"から。
あなたのそういう素敵なところ、独り占めできるなんて勿体無いけど。
でもでも、土方さんが私を選んでくれたから。

きっとそれが、答えなのです。





「土方さーん、起きて下さい、10分経ちましたよ」
「うるせぇバカ、まだ5分も経ってねェだろ」


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