下賎な遊女の生きる道に1
私の中で世界は簡単だ。 人間は2種類に分けられる。したたかな人間か、愚かな人間か。
私は勿論――後者だ。
けれど強弱をつけるなら、愚かな方が強いと、私は思う。 装飾塗れのかんざしを抜き、櫛を降ろし、髪を解く。
自分に吐き続けていた嘘は、とっくに真実になっていた。 もう迷うことはない。後悔もしていない。 不敵に艶かしく笑い、ゆっくりと着物を降ろす。
「さて、殿は私に一体いくらの価値をつけて下さるのかしら?」
目の前に詰まれている小判を唇で挟み、にっこりと微笑む。 身体ならいくら汚れても構わない。魂が、ここにある限り。
* * *
身体を売り、大金を稼いでいる遊女がいる。 それは前々から情報にはあったのだが、彼女に貢いだ 自業自得ともいえる男からの届け出と、沖田の一声で少し調べてみることになった。
そこで数え切れない程の『過ち』があることが分かり、流石に目に余るということで。
「このビッチを取り締まりゃァいいんですねィ、土方さん」 「まァそういうこった。頼んだぞ」 「おや、土方さんは行かねーんで?」 「別に斬り合いになる訳じゃねェし、そんな人員割かなくていいだろ」 「お偉いさんは腰が重くてかなわねェや。そのまま一生寝てろィ」 「あァ!?んだとコルァ 上等だ、行ってやらァ!」 「あーあーしまったなこりゃ。土方さんのちっちぇえプライド傷つけちまった」 「傷ついてねーよ!ふざけんなたたっ斬るぞコノヤロォォ!」
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