AM11時に咲く花 後編


「なんすかもう…くたばれ沖田…」
「なんで土方さんなんでィ。どいつもこいつも」
「は?何それ嫉妬?」
「誰があんなマヨネーズに嫉妬なんざするかィ」
「いいですよ語ってあげましょう土方さんの魅力を」
「いらねーや」
「なんだと」
「別に俺ァオメーが土方さんに発情してようがマヨネーズ舐めあってようがどうだっていいんでィ。ただ」
「マヨネーズ舐めあった記憶なんてねーよ」
「ただ、」

そこまで言いながらも沖田さんは言葉を続けない。
無駄に気になって頭をグイ、と上げると、意外にもすんなり身体を起き上がらせることができた。

ここぞとばかりに安全距離を保ち、床に座る。
なんだこれ、沖田さんのお悩み相談なんかに乗ってる暇はないんだが。
…ないんだが、そこで止められると気になるじゃないかよ。

「………ただなんですか」

痺れを切らしてそう訊ねると、沖田さんはどこからかアイマスクを取り出し目に被せた。

「…オメーがそーやって慕ってるとこ見ると、やけに苛々すんでィ。どういうつもりでェ貴様」
「な、」

なんだそれ知るかよ!と言いかけて言葉に詰まる。
マジでなんなんだ。それってなんだかさ、絶対違うけど、聞こえようによっちゃ、まるで

「わああああ違う違う違う何でもない考えんな!」
「あ?いきなり何でィついにトチ狂ったか」
「ちっげーよアンタが変なこと言、あ、いや、違くて!」
「…はーん、成程雌豚、俺がオメーのこと好きだなんて花畑な勘違いして照れてやがんのか」
「はァァァ!?調子乗らないでくれます私の王子様は土方さんですし!!」
「……ふん、それも良いかもしれねェなァ」
「は…!?」
「雌豚ァ」

安全距離を取ったはずなのに、沖田さんはアイマスクを首まで押し下げ素早い動きで私との距離を詰めてきた。
ぐおおおどんな鍛え方してるのこの人ォォ!怖ぇーよ素直に!
あとこの会話も、凄く怖い!!

「おい、こっち見なせェ」

ズサズサと座った体勢のまま後ろに下がるも、そのまま追い詰められついには壁にまで到達してしまう。
やべええ、逃げ場がない…!!
何とかしようと視線を逸らし続ける私に、サド大魔王はガッと顎を掴んで無理矢理目線を合わせられた。

近い近い近い、こいつマジふざけんな、その程度の眼光で萎縮するとでも思ったか!睨み返してやるもんね!!

「オメーのその気持ち悪ィ土方信教、乗っ取ってやらァ」
「ハイィ?何言ってんの、言っとくけど8年だからな土方さん信仰し始めて」
「簡単なことでさァ、オメーのちっぽけな信心なんざ二、三日で喰っちまうよ」
「やれるもんならやってみろ、大体どうやってするつもりで」
「つまり俺に惚れさせてやる、って言ってんでィ」

途端、いきなり沖田さんとの距離が縮まり、

「――――ッッ!!?」

唇が触れるか触れないかのところを掠り、また離れ、


「何固まってんでィバーーッカ。ブスが目立ちますぜィ?」
「さ…………最ッッッ低このクソ沖田がァァァァァ!!!!」


サディスティック星のサド王子は、ムカツクほどにっっっこりと微笑んだ。


fin



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