sevenアイマスク
「沖田さん」
縁側で寝そべって惰眠を貪っていると、どこか緊張したような声で呼ばれた。 アイマスクを浮かせ、声の主を見やる。 祐季だ。
「何でィ」 「あの、見回り。当番ですよ、私達」 「見回りィ?」
正直面倒臭い。 大体二人で見回りということは、担当は細い路地裏付近の所だ。あそこは屯所から近いし治安も悪くないので、そう滅多に取り締まることもない。 それよりゃぁ二人でサボりてェなァ。ここ最近何でか忙しいし。 だから俺はそれだけの理由で、いつものように冗談に言った。
「山崎とでも行ってきたらどーです?最近仲良いみてェじゃねーか」
すぐに抗議の言葉が返ってくると思った。 しかし…いくら沈黙が続いても、祐季は何も言わない。
「祐季?」 「………」 「おーい、ブス面晒してん「沖田さんのバカーーーーーーッッ!!」
……。 目が点になる。 祐季はまるでダムが決壊を起こしたように、今まで見たことないほど激昂?しているようだった。 ま、待ちなせェ、何で急にそんな…。
そんな疑問すら発する隙もなく、祐季は一気に責め立てる。 「沖田さんのバカバカバカバカバカ、後でどうせドS発揮されるんだからもう一生分ってかここ数日分言ってやるバカバカバカバカアホアホアホ! 何で!そんな平気そうに言うの!いや私の自意識過剰かもしんないけどさ!でも付き合ってるわけだし!そういう我儘もカワイーとか言ってくれるもんじゃないの! 私がどんな気持ちで山崎さんに頼んで、どんな気持ちで山崎さんとイチャイチャしてると思ってんですか! 沖田さんがずっとその調子だから私もう冗談じゃなく山崎さん家の子になろうかしらとか!半分冗談ながら考え始めちゃってさ! そんなときに…そんなときに何でそんなこと言うかな!!知ってる癖に!ドSが過ぎるんだよバカ!解るけど! 元々そういう性格なのは知ってるけどさ!その上で好きになったんだけど!でもでもでもでも!でもさ…っ! 好きだから、そういうとこも好きだから、好きだから、苦しいんですよ…!貴方が大好きで、大好きだから! でも沖田さんあの日から二人で話そうとしてくれないし、忙しいの知ってるけど、寂しいものは寂しいからしょうがないじゃん!
だからつまり一番私が言いたいのは!!」
「……言いたいのは?」
「………沖田さんが好きです……」
「ハイ、よく出来ました〜」 「…ッ、よく出来ました、じゃ、ないんですよ!」 「わぁーってる」
大量にこぼされた祐季の台詞を思い返しながら、俺は満足げに微笑む。 結局祐季がしてもらいたいのはこういうことだと、解っているから。
「寂しい思いさせてすいやせんでしたねィ、祐季。俺もホントは話したかったんですぜ?」 「……うそつけ」 「嘘じゃねェ」
よっ、と起き上がり、伏せた祐季の顔をくいっと持ち上げて前髪を払う。 気まずそうに目を逸らす彼女の視線を捕らえて、一度唇にキスを落とし頭を胸に引き寄せた。 わっぷと胸の中で息苦しそうにするが、それについては全く気にせず祐季に話しかける。
オメーは何もかも解った上で、しかも解ったところで感情はどうしようもないことも解った上で、苦しんで、
「それでも言いたいことは『好きってこと』だ、ってェ、言うんですねィ」 「…?」 「俺ァオメェのそーいうとこが…」
たまらなく好きなんでィ。
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