50戻りましょうか


「戻りましょうか、そろそろ」
「そうですねィ」

まことに恥ずかしい話だが、気づけば数分路地裏でイチャゴロしていた。
てか大半ゴロゴロしてた。なんだこの特殊な惚気話は。

「その前に土方さんに連絡入れときやすか。祐季も一体どうなってんだか、俺にもまだ解らないんでさァ」
「そうなんですか。―あ、あの。お電話の前に」
「何です?」
「今日のこと…詳しく教えてもらえませんか?」

一体全体。
どうやってこうなったんだか。
たずねると、沖田さんは珍しく少し困ったような表情を浮かべ、

「…まぁ、殆ど旦那のおかげでさァ」

と、呟くように言い、

「昨日、オメーが万事屋の旦那と一緒に帰ってきたとき、どうも旦那ァ山崎の携帯盗ってたみてェで。オメーが怪しい行動でもしたんじゃねェですかィ」
「あ…。実は、深夜のアレを手伝ってもらえないかって、昨日依頼したんです。それでですかね」
「多分それでさァ。んで今朝、オメーが屯所出る前から張ってて、出てきたところをつけてたみてェですぜ」
「ええっ」

偶然鉢合ったと思っていたが、どうも作為的だったらしい。

顔を合わせる前に、山崎さんの携帯で沖田さんに連絡。
その時点で祐季さんから連絡があったらしく、一旦電話を切り。
私を居酒屋に誘い、厠でまた連絡。
そこで「沖田さん死にかけドッキリ作戦」を計画。

いいところで山崎さんから銀さんに電話。
だからあの会話は全て二人の演技だった、ってわけだ。
…確かに言われてみれば銀さんは携帯を持ってた。その違和感に気づけなかった私の負けだ。
土方さん達の作戦を出し抜いたつもりが、私もまた出し抜かれたらしい。

「俺の訃報でオメーが全部投げ出して動くかどうかは、賭けだったんだがなァ、まぁ動かないわきゃねェよなァ」
「ひいいいドSっていうか自意識過剰!」
「事実を言ったまででさァ」
「外れればいいのに」
「殺されてーんです?」
「すいません今はその手の言葉に答えられないですちょっと色んな感情がごちゃごちゃしてるんで後にしてください具体的には24時間ほど後で」
「よくそこまで一息で言えたもんでさァ」
「感想はそこですかァァァ」

とにかくまぁ、そういうことらしく。
ようやく私たちは土方さんに電話を入れた。



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