47……沖田さん!!


路地裏には、人影は見当たらなかった。
まさか、移動して……!?
慌てて奥に入り込む。
するとそこに――沖田さんがいた。

「……沖田さん!!」

いた、というか。
うつ伏せになって、横たわっていた。
すぐに駆け寄り、身体を起こす。反応は、無い。
沖田さんは随分綺麗な顔をしていた。
まるで眠っているようだ、とか。
死亡フラグじゃ、ないか。

「沖田さん。沖田さん!起きて下さい!ねぇ!沖田さんってば!」

身体をゆすっても叩いても、沖田さんは何も反応しなかった。
ねぇ、嘘、でしょ…?
何があったのかは、詳しくは解らない。
誰にやられたのかも、見当はつかない。

でも、でもでもでも。
私の、せいだ。
少なくとも原作でこんな展開は無かった。当たり前だけど、そんな、ことって。
そんなことって…!

「っ…。沖田さん…。お願い、します…お願いだから…っ!私の命ならいくらでもあげるのに…っ、ねえっ、お願い、沖田さん…っ!」

沖田さんの身体にしがみつく。いつの間にか涙が零れて止まらなかった。

「ねぇ沖田さん…っ、目ぇ覚ませよ、何か言えよ…!ほら、ブス面晒してるよ私。タメ利いてるよ。ねぇ、いつもみたく減らず口叩いて、下らない話、しましょうよ……っう、……おきた、さんん……っ」

涙を拭うこともままならず、私は震えながら泣きじゃくった。
―ふと、しがみついた身体が温かいことに気付く。

―っ…!
混乱していたけど、もしかしたら沖田さんは意識が無いだけかもしれない。
ゆっくり身体を離し、沖田さんを改めて見る。
外傷は殆ど無いように見えた。隊服も汚れている様子もない。血の跡もない。
頭を打って意識が飛んでるだけ…とか…?
途端にほっとし、また涙腺が緩んだ。
きゅ、と手を握る。

どっちにしろ、まずは人を呼ばないといけない。
しかし私には携帯が無かった。
どうしよう、近くに大通りも商店街も無い。誰かが歩いている様子も無い。

―あ、沖田さんが持ってるかも。
意識の無い人間の服を漁るのは気が引けるが、ここは致し方ない。
これで時間掛かって間に合わなくなったら、それこそ私は…… 。
とりあえずポッケを探そうと手を伸ばし、触れて手を入れると――


「ッ!―何でィ、びっくりしたじゃねーか」


……………え?
沖田さんが喋った!?

「沖田さん!?」
「あ。つい喋っちまった。白雪姫的展開を期待してたのになァ」
「え…!?」

沖田さんはそう呟くと――むくり、と普通に起き上がった。
ぽかんとしている私に、沖田さんが言う。

「おーおー、確かにブス面してんでィ。あ、ちょっと待って、待受にするからカメラカメラ」
「え…あの……沖田さ……?え……?」
「誰が死ぬって?」

ニヤリ、と沖田さんが笑みをつくる。
そのピンピンした様子を見て、更には若干寝起き感を感じて―――

私はようやく、騙されていたことに気付いた。



back

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -