PM3時の白昼夢1


「つーかお前、マヨネーズ野郎に告ったりしねーの?」

何となく思い付きでそう問うと、目の前の重信者はハァ?と生意気な返事だけを返してきた。

そこに一切の照れや動揺もなく、手に取った菓子折りの裏面を凝視したままこちらを見もしない。

「私をそこらのミーハー女と一緒にしないでくれます?次元が違うんですよ」
「んな薄い宗教にもカーストなんてモン存在すんのかィ」
「人望の薄いアンタと違って土方様は奥が深いんで。てか今集中してんだから話しかけんな」
「どの菓子食ったってその贅肉が増えるだけだろーが」
「ちっげーよ自分用じゃないし!」
「ああ?」

祐季は更に隣の菓子折りの裏面も凝視し、再度先程の菓子折りを見つめてヨシと片方を戻した。

そこでようやく俺の方を向く。

「試食美味しかったんで。手土産に」

手土産。
コイツがあれ程懸命に選んでいたということは、相手はアレしか居ない。

オイオイ、これのどこが次元が違うって?

「なんでィ仕事中に色気付いて十分ミーハーじゃねェか。聞いて呆れまさァ」
「休憩中でしょうが今は!いちいち五月蝿いなぁもうホントどっか知らん所でくたばんねーかな」

ブツブツと文句を言いながら支払いを済ませ、祐季はそのまま他の隊士達と別の道に入っていった。

なんだか腑に落ちず、後ろにいた山崎を振り返る。

「あんなん誰が見ても惚れてんだろィ。なァ山崎」
「え゛っ、いや、その」
「ああ?はっきりしなせェ斬るぞ」
「ちょっ刀仕舞ってください!」

情けなくも山崎はバタバタと手を振り焦った様子を見せる。
仕方なしに鞘に納めるとあからさまに安堵した。

「いや、隊長もいつも言ってるじゃないですか、土方教って。それなんじゃないですか?信者は神を慕ったりはしないですよね」

……なるほどねェ。

祐季の消えていった方向を見ながら、先刻の真剣な表情を思い出す。

以前から時折感じるこの妙な苛立ち。
今の山崎の話がそれと関係あるのか無いのか、そこまで考えたところで面倒になり、思考を放棄した。

ついでに仕事も放棄すっか。

「あーあ、面倒くせェや。山崎、あと宜しくなァ」
「えっ隊長!?サボりですか!?ちょっ怒られるの俺なんですけどォォーー!?」









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