大人気ないハロウィン。
「なぁ、結衣よぅ」
「なんだい鯉伴さん」
「…はろうぃん、てなぁ、何だい?」
朝から出かけていた鯉伴さんが帰ってきたのは、もう夕飯も食べ終えた後で。
気が付くと目の前で呑気に座ってるんだ、呆れて物も言えない。
「なんかよぉ、人間の街ぃ、ぶらついてたらンなもん貰ってよ」
ぴら、と見せられたのは、良くある子供向けのハロウィンパーティーのちらし。
対象年齢は基本的に小学生までなんだがな。
発行店は…ってあそこのパン屋か…。
「ハロウィンねぇ。…由来なんぞ忘れたが今の日本じゃ、ある言葉言って菓子もらうってだけの行事のはずだけど?」
「…ふぅん。じゃ、この仮装ってなぁ、何のことだい」
「それぁよ、オバケの…真っ白いシーツ被ったみたいなオバケの格好して歩いて来いって事だろーよ」
むかぁし。
本当に、記憶から抜け落ちそうなほど昔。
…っても、正しくは二十ウン年前。
たった一度だけ、親がいないのを良い事に菓子をもらいに行ったことがある。
あん時は、本当にシーツ被っていったなぁ。
…当然ながら父親にバレて、没収された上に、三日間メシ抜きでDV三昧。
それ以来、僕は逃げていたわけだ。
「じゃ、この言葉ってなぁ、何だい」
「…トリックオアトリート、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ…って意味」
「楽しそうじゃねえか、なぁ」
「僕は、やらない」
やりたくもない。
…まぁ、リクオ様がやるのならば付き合うけれど。
本音は思い出したくもないし、忘れていたい。
「じゃ、本家妖怪共に向かわせっか」
「…バカかお前は」
「だってよぉ、結衣、やりたくねえんだろぉ?」
だったらちび共にやらせるしかねぇじゃねーか。
さも当たり前のように言う鯉伴さん。
…否、コイツにとっては当たり前。
一度言い出したら聞かないのは、もう分かってたはずだ。
しかも『楽しそう』なんて言っちまっちゃぁ、オシマイよ。
「…判った。あんたといってやる。でもな」
貰えなくても、泣くんじゃねーぞ。
ビシ、と指を鼻先に突きつけて。
良いな、と念押し。
気圧された鯉伴さんは、言葉もなくコクコクと頷くばかり。
まぁ、大人だけで行くのもツマらない。
がら、とリクオ様の部屋を開けて、首根っこつかんで連行。
「ぇ、ちょっ、結衣、ボク、宿題…っ!」
「後で面倒見る、良いから来い」
「ちょ…ちょっと、結衣ー!?」
軽々とリクオ様を担いで、玄関を出て行く。
途中の店でコスプレ用のオバケとマントを買い、二人に着せてやる。
うん、なんか僕、間違えた気がする。
「…おとーさん、人気だね…」
「そーだな。しかもちゃっかり菓子貰ってやがる」
「あはは…。あ、ねぇ結衣」
「ん?何、リクオ様?」
吸血鬼になった鯉伴さんを放置で、三歩後ろでリクオ様と会話。
…女共はキャーキャーと煩い。
ポンチョ型のオバケを着ているリクオ様は、フードを下ろし、唖然としていた。
「結衣は無いの?お菓子」
「あぁ、屋敷にありますよ。…この年でイタズラされたくはないですし」
「えー、結衣若いじゃん!オッサン発言止めなよー」
けたけたと楽しそうに笑うリクオ様に、安心する。
ふ、と目線を戻すとあのパン屋に行った鯉伴さん。
遠目から身振り手振りをお伝えします。
俺にもくれ!(トリックオアトリート!)⇒なんだいやらないよ(さっさと帰っておくれ)⇒ビラ渡されたんだよ!(トリックオアトリート!!)⇒煩いねぇ(そんなの、子供に渡しな!)⇒そして。
「…〜〜…、結衣ーー!(大泣)」
「……あそこはな、手強いんだよ…」
「え、知ってるの?」
「んー、…一回だけ行ったからね」
はは、と笑って、鯉伴さんを回収しに行く。
泣きながら抱きつこうとしたから、顔面にケリ入れてやって。
全く、天下の往来で人の名前を叫ぶんじゃない!
「…ほら、帰るよ。リクオ様も」
「うん。…もー、父さん、うるさい〜」
「だってぇ〜〜、菓子ー…結衣がぁぁー…」
「………黙らないとリクオ様の目の前でベロちゅーしてやんよ?」
「おう、望むところだ!」
「っ、父さん!?」
「…ほぉ…。そーかそーか、なら遠慮なく…!」
「って、結衣!?やめて外で望まないでー!!(泣)」
こんなハロウィンなら、有りなのかも。
(あ、五麒麟、とりっくおあとりーとv)
《はい、コレ五人分ね♪》
生クリームのホールケーキ、どん!
(え、知ってんの?)
《そりゃぁね!若菜様と買って来ちゃったw》
(……うそー…orz)
五麒麟は、そこはかとなく強い(笑)
―――――――――――
ハロウィンラストです!
太陽〜の世界だと奴良鯉伴は頭弱いのでw←
[ 73/74 ]
[mokuji]
[しおりを挟む]