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頭が重い...
いろんな感情が渦巻く中雪男は机に向かい燐の為の授業対策を考えていた。
夜9時になっても燐はまだ寮に戻らない。
... ... ...遅い
次第に苛立ち始めたその時、燐の陽気な口笛が廊下から聞こえてきた。
「わりぃ、遅くなった!すぐメシ作るな!」
「夕飯はいい、ウコバクが兄さんの分作ってくれているから、食べてきたら?」
言葉の端々に棘を感じた燐はすぐさま雪男の機嫌が悪いことを察知した。
「何、怒ってんだよ!」
「怒ってない、それより、何処で何してたの」
「か...関係ねーだろ...!でも遊んでたワケじゃねーぞ!」
「...関係ない?」
声のトーンが変わり、雪男の額にぴしっと血管が浮き出している様が容易に想像出来た。
こうなった時の雪男は怖い。ただでさえ、最近様子がおかしいのに、つまらない意地で怒らせては厄介だ と燐は観念した。
「るっせー眼鏡!勉強してたんだよ!」
「...勉強...?兄さんが?冗談はやめてよ。」
「ーっ!冗談じゃねーっての!俺だって、考えてんだ!しえみたちも一緒だ!嘘だと思うなら聞いてみろっ」
「しえみさんも...?」
ふと何かが心の中で引っかかったような気がした。胸の奥がざわめく。
「...仮に本当だったとしても、勉強は僕が教えると言ったよね。勝手にうろちょろしないでくれ!」
「ーなっ、なんだてめー!しえみの名前出したからって!まさか俺に妬いてるんじゃねーのかっ!えぇ?このエロメガネっ!」
燐の何気なくからかっただけの言葉が雪男の逆鱗に触れた。
その瞬間、しまった、と燐は思ったが時既に遅し、燐は胸ぐらを掴まれ壁に押し付けられていた。
「兄さんは何もわかっていない!兄さんの勝手な行動が何に結びつくかもわからないんだぞ!いつもいつも、どうして言うことをきいてくれないんだ!!」
口を挟む余地などないくらいに雪男は捲し立てた。
溜め込んでいた何かを吐き出すかのような物言いだ。燐は今更ながら、後悔した。
「人の気も知らないで...!
兄さんを守るのは僕の使命なんだ!」
強く言い放たれたその言葉は、燐の胸を深く抉った。お荷物だと言われているかのようでなんとも惨めな気持ちでいっぱいになった。
「...誰も頼んじゃいねーよ...それに俺はお前に守ってもらわなくてもやっていける!弟に守られるなんて、そんな兄貴あるかよ...!」
まるで自分に向けて発した言葉のようだった。
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