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(なんでもない日+α)
「何やら楽しそうですねぇ。私たちも混ぜてもらいますよ。」
塾の一室でささやかな誕生日会を開いていた一同は声の主を見るや否や、目を丸くした。
「メ、メフィストぉ!?」
「霧隠先生!?」
メフィストの後ろからひょっこり顔を出したシュラがにゃほいと手を振りながら教室に入る。
「構いませんが、これから、プレゼント交換なんです。おい、志磨!プレゼント余分にあらへんか」
ちゃきちゃきと仕切っていた勝呂が志磨に目をやる。
「まさか!紳士ともあろうものがパーティーに手ぶらで、顔を出すとお思いか?」
ぽわわと煙が立ち込めたかと思うと、人二人分はあるカラフルな包み紙を纏った巨大な箱が姿をあらわした。
「あたいも、ほれ!」
胸元の朱字から手品のようにプレゼントを出して見せる。
「うわ!すげっ!」
「霧隠先生の胸元ってどこに通じとるんやろ...!」
二人のそれを見るなり一同は更にテンションを上げる。
「じゃ、じゃ、じゃあ、プレゼント交換をはじめます!」
提案者であるしえみがたどたどしく司会進行をしはじめる
「なぁ、雪男メフィストのあれ、何が入ってるんだろうな!」
燐は楽しみだと笑うが、雪男は一人、眉間にシワを寄せて何やら考え込む。
(兄の鼻メガネは絶対に避けたいところだ。それに付け加え訳のわからない刺客が二人も。)
メフィストとシュラの方に目をやる。
シュラが缶チューハイを片手に胸元から出したプレゼントを机の上に置く
メフィストのそれよりもはるかに小さく片手でも持ち運べるサイズだが、何やら重そうなそれは、おそらくーー
雪男は少ない情報からモノを推理し始める。
(だいたい想像がつく。片手に持っているそれだろう。自宅か、あるいはここへの道中で購入したものを適当に見繕って持ってきたのだろう。大雑把なあの人ならやりかねない。)
当たっても差し支えないと判断した雪男はメフィストの方に目をやる
(問題はあの巨大な包み紙...、気分屋で、私生活など見えない彼のことだ。全く読めない...!兄の鼻メガネよりも危険なにおいがする)
二千円札がマイブームだと言って生活費を二千円に指定された記憶が鮮明に蘇る
「俺、いっちばーん!」
燐が飛び跳ねながら抽選くじを引く。
それぞれ二つ折りになった紙を引き終えるとしえみの合図で一斉に番号を確かめる。
「ぷぷ...!坊、ピッタリですやん!」
愛らしいうさぎのぬいぐるみを抱えた勝呂が顔を真っ赤にして志磨を睨むとお前のんはこれや!と分厚い参考書が入った箱を手渡す。
志磨は慌てて番号を確認すると、絶叫してその場にへたり込んだ。
「それは俺からや!しっかり勉強せえや!」
志磨はしょぼくれながら子猫丸に助けを求めようと声をかけるも、子猫丸は目の前の箱に気を取られて志磨の問いかけに応じられない
「これ、もしかして...」
正十字サワーと書かれた缶を確認すると三人はシュラの方に目を向けた
「にゃはは!それ、あたいのだ!一足早い成人の日の祝いにだな!」
「いや、早すぎますって!!」
「そか?にゃはは!」
遠巻きにやり取りを見ていた雪男はやはり、睨んだ通りだと目を光らせた。