夜更けの邂逅 ブザーが“侵入者あり”と鳴り続けている館の中には一人の少女がいた。 バタバタと足音を立て、まるで存在を誇張しているかのような男達に少女の唇は孤を描く。 「いたぞ、回り込め!」 一際恰幅のよい男が少女を指差し、彼の配下の者達が彼女を取り囲んだ。 「もう逃がさんぞ、影虎」 「……こんなちゃちな包囲網であたしを捕まえられると思っているの」 「安心しろ。我々も同じ手を何度も喰らう馬鹿ではない」 そう言い、彼はその太い腕を宙に上げた。 すると周りの警察官はほぼ同時に黒い塊を少女に向ける。見上げればライフルを構えた者が頭上から彼女を狙っている。 「なら安心したわ」 尚も不利な状況を突きつけられているというのに少女は余裕の笑みを崩さない。 それが余計に彼らの心を不安へと駆り立てる。 「もうオレに失敗は許されないんだよ。 それに射殺命令も下されてるんだ。身柄確保は死体でも構わない、とな」 「へぇ……堕ちるところまでいったのね。日本の警察も」 確かにそう言われてしまえばそうである。 だが年端もゆかぬ小娘如きに手をこまねき失態を繰り返していることは警察にとって最大の恥だ。また此処で取り逃がしでもすればマスコミが騒ぎ立て、更に国民の信頼を失うことになってしまうに違いない。 そう判断した“上”は強行手段へと出た。 私利私欲のため財界で生き抜くため各々がエゴを孕ませながら。 それを気に入らないと感じながらも哀しいかな、男には逆らうすべもなく、、、 言われるがままに人員を増やし、全員に銃携帯の命令を出した。 どこか警鐘を鳴らす道徳心に目を瞑って。 [*←]|top|[→#] |