第一夜 「はじまりのはじまり」 そこはセピア色の世界だった。 時折ぶつ切りのノイズが走ったり、映像も荒く、漠然としており昔の映画を見ているようで他人事のような感が否めない。 しかし自分の記憶だと、心のどこかで訴える声がだんだん大きくなっている。 その廃墟の瓦礫の中に誰かが佇んでいた。 その人の映像は一層酷く、顔すら歪んでいて誰だか判断することは出来ないくらい酷いものであった。 空からまるで雨が降ったかのように彼は濡れていて。しかしその服を濡らしていたのは雨ではなかった。 赤黒くどこか見覚えのある、馴染み深いもの――血、であった。 頬に一筋の透明な液体が伝う。 それはやがて朱に染まり、血に混ざり、わからなくなってしまった。 男の血に染まりきった手が伸ばされ、囚れそうになったところで世界は閉じ、暗転する。 まだその血の香りが鼻腔に残っていた―――。 [*←]|top|[→#] |