後ろ姿でもすぐにわかる、光り輝く金糸の髪を見つけた。

「おはよう美春ちゃん」

「おはよう」

花のような可憐な笑顔の美春の隣には、それを信じられないといったように目を瞠っている小太郎がいる。

「コタローもおはよう」

「はよ。いい加減訂正するのも面倒なんだけどよ」

「さっさと諦めたらいいのよ」

「うるせえ」

「ところで咲姫ちゃんはT組とV組に転校生が来たって知ってる?」

「サラッと無視するな」

「転校生?」

その言葉で思い出されるのは、今現在進行形で咲姫の家の第2執事をしている葉月蛍のこと。

首を振って、道化のように掴みどころのない男のことは忘れたことにする。

「女の子二人組らしいの。けどそれ以上は陰月先生に探りを入れても教えてくれなかったわ」

「へえ……なんか最近周りが騒がしくなってきたな。結構微妙な時期なのに」

美春の情報に感想を漏らした小太郎に咲姫の心音が一際大きく鳴った。

そんな彼女に気づくことなく、美春は呆れの色が強い溜め息を吐いた。

「あったり前田のクラッカーよ! ようやく秘されたお姫様の存在が明るみに出たんだから」

「古っ! つかお前、ナニ言ってるんだよ」

「だーからっ、コタローにはまだ関係ないわ」

「意味わかんねぇし」

「わからなくて結構!」





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