雀のさえずる声で、咲姫は爽やかな朝を迎えた。

「お早うございます、咲姫様」

真紅のカーテンを開け、朝日が咲姫の部屋に降り注いだ瞬間、音もなく表れた宗像が目に皺を寄せ香ばしい匂いと共に、咲姫に近づく。

「宗像さん。おはようございます」

「よく、お眠りになられましたか?」

「はい。とっても」

朝日を見詰め、咲姫はゆっくりと目を細めた。

『僕達、ヴァンパイアにとっては太陽は毒なんだ』

週末の夜、体調も回復した咲姫に、予定を開けてくれた紫苑が咲姫の髪を撫ぜながらそう語りだした。

『毒?』

『咲姫はまだ大丈夫だよ。成人を迎える年からゆっくりと苦手になってゆくんだ。
だからヴァンパイアは自然と日昼の活動を避ける。それを知った人間は僕達が日の下に出ないのは出ると灰になってしまうからだと考えたみたいだ』

『灰に?』

『当然、灰にはならないよ。ただ少し苦手なだけだし、少し我慢をすれば昼間でも活動することが出来るよ』

『でも、私…』

『咲姫はまだ大丈夫。日の下でたくさん学んで遊んでおいで。
残された時間は長いようで呆気なく、――儚いのだから』

そう言って、紫苑は薄く、悲しげに微笑んだ。





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