「興味?」
ゆっくり訊ね返す。
頭の中で彼の言葉を整理しながら。
「そう、興味。まだ未熟な姫がどんな変貌を遂げてくれるか、キミの未来に興味があってね」
そう言って不意に距離を縮めた彼は、白い手袋に包まれた手で咲姫の手をそっと取った。
そしてリップ音。
驚いて蛍の顔を見詰めるが、彼の顔は焦る咲姫とは対照的に余裕に満ちている。
「これからよろしくね、お嬢様」
――受難の日々が音を立てて始まった。
『†十字架†』 第一夜 fin.
-34-
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