尿道カテールを外し自力で排泄出来る状態になったのだが、どうも違和感を感じる。汚い話になるんだが、まだ歩けない私は尿瓶が用意されている。だから、尿意を感じ尿瓶に小便しなきゃならない。まあ、分かる。トイレに行けないので、それは分かるんだ。けれども、股間に付いているペニスを見た時、非常に驚いてしまった。違和感というのはそれだ。何で自分の一部にいちいち驚かなければならないのか。そして、この顔を鏡で見る度、マンガに出てきたアンジェロに似ている。奴の特徴ある額の骨格が私にもあるんだ。そりゃあそうだ。2週間前やって来た四部仕様の承太郎が私の本名は片桐藤四郎であると伝えてきた。私はアンジェロの親戚で間違いない。だから、一般人のいない隔離病棟にいるはずだ。じゃあ、私というのは誰なんだという疑問が残る。いや、☆☆♪♪は一体誰だったのかだな。この片桐藤四郎の体を悪い言い方すれば乗っ取ったのだ。最早、私が片桐藤四郎になり得てしまう。
 あと、もう一つだ。承太郎に会いジョジョの奇妙な冒険のマンガを思い出しなぜなのかそのマンガの世界に自分が居たという信じられない事実を知った。そして、片桐藤四郎という名前の登場人物は出ていなかった。昔読んだっきりのマンガだが、当時は読み込んでいた。今はうろ覚えになっているが、これは確実だ。そして、この片桐藤四郎はスタンド使い。ほぼ間違いないなく失踪事件の犯人だとして、この藤四郎のスタンドの能力はなんだったのか。成り代わった今でも使えるのか。


―――


 ジョセフの遺産相続整理のために調査していた承太郎はジョセフの隠し子東方仗助がいたことを知り、ジョセフのスタンドハーミットパープルで所在を探るべく念写したところ、妙なものが写りこんだ。
 それは通称アンジェロと呼ばれる日本犯罪史上最低の殺人鬼、仗助の住む付近に潜んでいることが分かったのだ。死刑執行に生き延び脱獄していた男。死刑執行され生き延びるなどという普通じゃない出来事。つまり、アンジェロはスタンド使いの可能性がある。スタンド使いか把握する必要がある。そのために承太郎は遺産相続の話とアンジェロの調査のためM県S市にある杜王町へ赴くことになった。
 アンジェロに関して無視出来ない事柄があった。現在、SPW財団が運営する病院に交通事故で入院している記憶喪失の男はアンジェロの弟藤四郎。事故前、失踪事件の容疑者として追われていた。藤四郎もまたスタンド使いの可能性があり、承太郎のスタンドを目視した彼はスタンド使いだと判明した。承太郎は藤四郎の所にもう一度訪れる事にした。


―――


 駅で降りた土地は私にとって四部の世界として映る。そこに、承太郎とやって来てしまった。話は簡単だ。スタンド使いとしてカテゴライズされて、失踪事件容疑の掛かった要注意人物であり身内が最低の犯罪者だった。まさかの兄弟! ついてないの話じゃない。私は当て馬にされるために連れ出されたわけだ! このパターンは危険だ。マンガでいうモブが殺されるパターンや! スタンドが見えたとしても以前スタンドが発現する気配がない。スタンドは闘争心とか防衛反応とかで出てくるものだったはずだが……。このままスタンドバトルに突入してしまうのはマズい!
 承太郎はぶつかった康一とぶちまけたものを持ち前のスタープラチナが拾っていた。スタンドってマジ便利って今まさに原作が始まった。
 遠目で不良に絡まれている仗助も見えた。ああ、これから生き残れるかの瀬戸際。
 ついに、四部の主人公の仗助と三部の主人公の承太郎との出会い。これを読んだ当時は興奮していた。あのかっこいい主人公の承太郎が大人になり登場するシーンは胸熱ってやつだった。今生身で見ている感動というものは一片もない。あれは、マンガという娯楽の一つだ。現実から目を一瞬背けるために読んでその世界に酔いしれる。これが、私の現実になったその時で何の楽しみなんてない。二人の会話を耳で聞きながら、気まずそうにする康一にも声をかける気も起きない。現実から目を背けたいがそうにもいかない。仗助が私の事を聞いてきたからな。

「そのォ〜〜。承太郎さんその人は?」

 承太郎はちらりとこちらに目を向ける。この町に来たもう一つの話をしてその弟だと言った。仗助は興味なさそうだったが、康一は顔を青ざめた。これが正しい反応だ。
 結局、スタンドバトルは早くて目が追いつかないし――寧ろ時止めは分かるまい――スタンドが恐ろしい能力以外分からなかった。ラッシュとか紙面と違い殴る音も凄まじいし超人たちの闘いと言った方がいい。こんなバトルマンガ現実じゃお断りしたい。私が巻き込まれたら一瞬で死ぬ。
 というか、承太郎と同じ部屋とか勘弁して……。
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