お目当ての物を手に入れられるとあって高揚感が高まったその時、私の名前を呼ばれた。
「こんにちは。ここに☆☆さんも来られるんですね」
 そして、私は一気に気持ちが急降下した。
 目の前の男は金髪に浅黒い肌の格好いい男。あのコナンの依り代にしている毛利小五郎の弟子になったという探偵らしい。コナンと一緒に居るところを見かけたこともある。しっかりしたキャラ立ちに主要メンバーとの関係性からこいつが原作に登場する人物だと十中八九分かる。
 そんなやつがこんなゲームショップでただのショッピングにきて私に声をかけるだろうか? 蘭ちゃんや子供たちのように害のない人物ならそれで構わないが、こいつは、如何にも何か裏があります感がびしばし見受けられる。偶然を装い近づいたとな!
 私が良い感触が得られないことに少し苦笑いをした。
「声、かけちゃまずかったですか?」
「……いや、すみません。そうじゃないんです。ただ、なんで、私に声かけたのか不思議で」
 ここで、頭脳戦は向こうの軍配があがるのであっさりと私はあんたを警戒しているとストレートに出す。向こうの出方を窺ってみれば、とびきり素敵な笑顔が返ってきた。
「そんなの簡単ですよ。僕は貴方とお近づきになりたいからです」
 もしもだ。もしも、私がコナンを知らずにここへやって来たのなら、こんな良い男にこんな言葉をかけられればその気になる。
「へぇ〜? それで、こんなところにいたのは待ち伏せとかッすか?」
「待ち伏せだなんてッ!僕は、ただこの店に入っていく☆☆さんを追いかけて……その、待ち伏せではないです」
 この人、きっと、黒の組織に加担していると考えていた。しかし、なぜ、私に近づいた? しかも、なんか、これって……
「もし、☆☆さんが良ければ食事でもどうですか?」



───



 ☆☆♪♪、クルマ製造工場勤めの17才。今までの出生、経歴もなければ渡航履歴もない。そして、腹部貫通に左手の切断という大怪我を負って生還を果たした。半年前、突如として現れた存在。怪しまない方がおかしい。この人物。組織に拉致、或いは、元組織のメンバーだとしたら。
 ☆☆♪♪は本人が名乗った新しい名前だ。
「ああ、俺だ。今から送る人物について調べてくれ」
 隠し撮りした複数枚の写真を添付し送信する。

 偶然を装い声を掛けた彼女の反応は、先ほどわくわくした面持ちがそげ落ち、まるで能面のような顔になった。ここまで俺が話し掛けただけで顔が変わるのは驚いた。しかも、悪い方に、だ。今まで顔が良いことを利用して女性に対して比較的簡単に情報を聞き出してきた俺にとって珍しい反応をみせた。
 その反応に対して聞いてみれば、今まで面識を持つ人間が声を掛けたことが分からないと割と痰泊な答えが返ってきた。彼女は人付き合いがあまり好きじゃない寧ろ面倒に思うタイプの人なのかも知れない。
 だったら、僕は貴方に好意があると見せてみれば、これが酷かった。普通の女性なら少なからず嬉しそうに顔を綻ばすはずなのだが、彼女は眉間に皴を寄せ、訝しむ。これは、悪手を打ってしまった。
 なんとか食事に誘うが完全に振られてしまった。
 表情を出す分、取り繕うことはない素直な性分だが、ここまで警戒されるなんて……。これで、この方法は失敗に終わった。しかも、より一層彼女が普通じゃないと浮き彫りになるだけだった。

 
 
 
 
 
 
 
 公安に戻り、仕事をしていると、風見がファイリングした書類を俺に手渡した。
「☆☆♪♪の今までの資料です」
「! ありがとう、風見」
 警察の資料では主に当時の病院へ搬送された事が主だった。☆☆♪♪のDNA判定では正真正銘の日本人。そして、輸血の後に血液型がA型からO型に変わる。胃腸を40%失い。腎臓一つダメにした。失った骨の代わりにボルトで繋ぎ、切断された左手は未だに見つかっていない。
 国内の失踪者のリストには彼女らしき人物は該当しなかった。
 考えられる可能性は、元々裏社会で生きてきた人物だったんだが、何かしらそれが上手くゆかずに、殺害されたが生き残った。しかし、これはただの推測にすぎない。しかも、殺されずに生かされるとなればその線は薄いだろう。彼女は☆☆♪♪として、戸籍を得て堂々と生活を営んでいる。

 関わった事件では、人命救助をした実績もあるが、ここで疑問が残る。アパートの火事についてのことだが、当時、左手のない彼女が大人の男性と子供をどうやって救出したのか。
 彼女が手を取っていたゲームのソフト。彼女が店を出てから店内へ戻り、同じ彼女が購入したゲームソフトを手に取る。戦国時代をモチーフにしたバトル物である。それを手に取り店の人にこのゲームの本体を見せて貰った。ゲーム操作をする際のコントローラー。今は片手で持つタイプのものもあるらしいのだが、彼女の購入したゲームソフトはこの両手に持つコントローラーを使用する物らしい。
「先ほどの彼女、よくこちらでゲームを購入されるんですか?」
「そうですね。結構最近頻繁に来てますね」
 つまり、自分にあのゲームソフトを購入したとなると、彼女はどうやってゲームをしている?
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