寝ているとき人の言い争いに目が覚めた。まだ暗い部屋を見ながらまだ夜が明けない時間らしい。時計で確認するには部屋の灯りを付けなければならない。それが億劫で時間を確認せず再び布団に横になった。その後階段で物音がして暫く静かになった。50日の旅から人の気配が気になり寝付きが浅くなった自分に嫌気が差す。漸く眠れると思ったとき、何故が煙たさで咳き込み、異常な様子に電気を付けて唖然とする。部屋中真っ白煙が充満していた。咳をしながら手探りで玄関まで辿り着き、施錠を何とか解除して扉を開けて外に逃げおおせた。新鮮な空気を吸うように息を整えれば辺りが熱気に包まれ、アパートの周りを火の手が回っていた。

「かっ、かじッ!火事」

 緊急事態だと慌てて逃げようとすれば何かに躓き転げた。頭をぶつけ一瞬視界が白く滲んだ。くらくらする頭で足下をぼんやりとみれば、蹲って倒れている人が居た。

「大丈夫ですか!?」

 どす黒い煙が視界を奪い熱さを感じるほど火の手が回るのが早い。このままではこの人焼け死ぬ可能性もあった。呼びかけにも反応せず、上体を上げて初めてこの人が大家さんであることがわかった。脳裏で過ぎったのは一酸化炭素中毒。アパートにまだ人が居るかもしれない。

『ザ・ワールド』!! お願い! 出て!

 シュゥウウンッ! 私の声に本当に現れた『ザ・ワールド』に一気に安心してしまう。大家さんを外へと心で思えば『ザ・ワールド』は私の横で倒れている大家さんを抱きかかえると道路側まで避難させ、私の傍に控えた。本当に意志に従い動く……これがスタンドなんだ。次からは一つ一つ部屋を確認しなければ、確かパワースタンドでもある『ザ・ワールド』は射程距離10メートル。この場からでも全ての部屋の確認が出来る。

「『ザ・ワールド』!」

 荒っぽいが壁を突き破り突入させ、隈無く見て回る。不思議な感覚なのだが、『ザ・ワールド』の見ている景色が私の目にも見える。視界が悪い中、横に眠るようにして倒れている開人君を発見し連れて来て貰った。渡された開人君の体を抱きしめた。大丈夫! 息している! 涙が溢れた。良かった! 本当に良かった! 『ザ・ワールド』が居てくれて助け出せた命に感激してしまう。その間『ザ・ワールド』には全室確認させ、アパートに残っていたのはこの2名だけだった。使い手でスタンドは凶器にも成り得る。あの旅でDIOに苦しめられ、『ザ・ワールド』に腹を打ち破られたが、今、私の横に佇むのも同じ『ザ・ワールド』だ。なんか変な感じ。何で私のスタンドが靄から『ザ・ワールド』に変わったのかはわからないが。

「ありがとう」

 助かったと手を伸ばせば、『ザ・ワールド』には触れられない。『ザ・ワールド』は目を瞑り私の中へと帰っていった。

 いつの間にか人集りが出来ていて、駆け付けた救助隊が安否確認を行おうとしていたが、アパートには私たちで全員だと伝えた。そこからすぐ救急車が到着し、大家さん親子を運び、何故か私まで乗せようとした。

「え! ちょっと、具合が悪いのは2人だけです」
「何言っている!? 怪我だらけで流血しているんだぞ! 君も病院に!」

 隊員2人に担架に乗せられ、呆然として救急車に乗せられた。隊員の一人に頭を布で抑えられ、その布が白から見る見るうちに赤に染まっていた。どうやら、頭を打った際出血していたらしい。そして、火傷も多少なりともあり、病院では足の裏にプラスチックの破片を幾つもぶっささったまま歩き回っていたことから頭より足裏が酷いらしい。自分の状態を把握してそこから痛みがきた。アドレナリン爆発させてたんだと思う。
 



「あっ、しろくッコナン君」
「もう、言い直さなくてもそのシロクロ君でいいよ」
「どうしてそれを?」
「開人君の日記にそう書いてあったからだよ」

 開人が少年探偵団に怪しいヤツが何をしているのか突き止めて欲しいと依頼をし、話を聞くため訪れた少年探偵団が火事を知り、現場にあたっていた弓長警部との捜査を聞きながら焼け跡から発見された開人の日記に事件当日の内容に赤い人、白い人、黄色の人が書かれており、黄色い人が開人の言っていた怪しいやつと犯人が同じだと考え、赤い人、白い人、黄色い人が全員アパートの住人で、コナンの推理で見事黄色い人と書かれていた真壁吟也と分かり事件が解決したことを報告した。事の真相はデイトレードで二億を荒稼ぎし、税金逃れする為アパートの庭先に現金をケースに入れていたのを開人の父にバレてしまい口論の末、火を付けて回ったというものであった。

「ありがとう。犯人を見付けてくれて」

 見舞いに来てくれた少年探偵団と子供たちを連れてきた阿笠博士とアパートの住人にして赤い人でもある沖矢昴が見舞いにやってきた。
 本人に日記を返したコナンはある疑問をぶつける。

「それで、もう一人、アパートの住人で☆☆♪♪さんっているでしょ?」
「うん、いるよ」

 事件には関係ないが、彼女もまた色で書かれており、コナンにはどうしてもわからなかった。

「最後の一人だから金色の人が♪♪さんってわかったんだけど、なんの車になぞらえているのかわからなかったんだ」
「ああ。それはクレーン車だよ」
「クレーン車? 金色のクレーン車なんてあるの?」

 クレーン車なら黄色いものが一般的である。コナンにわからなかったらしい金色に開人はそれはそうだよと笑った。

「トミカの中でもメモリアルで売られたんだ! 金メッキのクレーン車。僕も持ってないトミカなんだ」
「へぇ、そうなんだ。それで、どうして♪♪さんがクレーン車なの?」
「それは……僕よくおっちょこちょいでぶつかったりころんだりするんだけど。学校帰り僕見たいテレビがあって、慌ててたんだ。そしたら、躓いて転びそうになったんだけど、掴んでくれて助けてくれたんだ。お姉ちゃんと僕離れてたのに。そこからびゅーんってお姉ちゃんのところまで運ばれて、まるでクレーン車みたいだって思ったんだ!」
「どうやったか見た?」
「ううん、前に転びそうになって後ろから引っ張られたからわからない」
「そう……」

 二人を助け出したのは☆☆♪♪だと聞いたが、あの火事の中、女性で尚且つ障害を抱えているにはかなり難しいことのようにコナンは考えている。しかも、今の開人の話じゃ、何かしら身体的に優れているのか。

「おい、お前ら。俺♪♪さんのところ行ってくるから。ここで待ってろ」
 三人は元気に返事をした。灰原哀も頷き残るらしい。一緒についてきた沖矢を警戒しているようだ。







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