この世界で宙に浮いた存在の私は入院中に就籍を行わなければならず民生の人におせわになった。治療費が払えないため所謂生活保護法の利用である。加えて、左手のない私は未成年の身体障害者の申請やらも行ってくれた。私はそうしてこの世界の日本で☆☆♪♪という名前の人間になれた。
 ジョショの世界では毎回の怪我をあっという間に治していたスタクルメンバーを化け物じみた目でみていたが、それが瀕死の怪我から見事何不自由なく元通りに生活できるくらい回復した自分に当てはまるとは思うまい。普通なら、半身不随でもおかしくない。人工骨と、皮膚移植など多岐に渡る手術と病院の人たちの渾身的な治療とリハビリのお陰もある。
 終ぞ退院となった日は涙ながらに看護師が喜び医師も♪♪さんよく頑張ったと労い、この世界の人々の優しさに触れた。
 なんだが、ひどく自分がすれていることに気が付いた。
 やはり、人間は人間らしく。吸血鬼やらスタンド使いなんかの闘いの日々は一般人には厳しく心も削れていってたんだなと改めて思った。
 そして、この小さな探偵も私の退院退院祝いとして駆けつけてくれた。
「退院おめでとう!♪♪さん!」
 さすがにこの言葉に邪推するのも憚れて、素直に受け取る。その様子にコナンは少し安心した様子を浮かべられた。随分と心配されていたらしい。理由を問えば、だってこの世界で一人で心細いでしょ? らしい。なるほど、イケメンな主人公だ。さすが、ザ・主人公。あの同じ年の彼とは似ても似つかない。これが男前だろう? 承太郎よ。
 コナンに連れてこれた先は阿笠博士というコナンのお馴染みのキャラクターだった人物だ。確か、声をあのおじさんのものに変え、かわりに推理していた時にも大活躍な機械をコナンに渡す天才発明家だったか。
 ぼんやりとした昔の記憶を辿っていけば、横からコナンが事情は話してあると言って、思わずおっとっとと、してしまった。
「博士は理解者だから、♪♪さんのこと分かってくれてるし、事情を知っている人がいた方が何かと助かるんじゃないかなって」
「う〜ん、うーん」
 入院中、足を運んでくれたコナンは私がこの世界の人間ではないと知ってから、退院後の身の振り方に阿笠博士という人にお世話になればいいんじゃないかと進言されたこともあった。さすがにそこまで甘えることも出来ず、独身男性の一人住まいに女の私が居候はよくないんじゃないかと言って断ったことがあった。博士に限ってなんて呟いていたが、世間体も気にしてあげてと言ったら渋々なっとくしてくれだけれど。
 そこまでしてコナンが私に助けようとする意図が掴めず、まさかスタンド使いを例の組織の即戦力に宛がおうなんてと邪な考えが自分の中でこの世界の優しさにと葛藤していた。
 結局、阿笠博士のお住まいに来てお互い自己紹介を済ませ話を伺えばなんてことのない好々爺というかなんだがコナンに体よく利用されていてもそれは人として当然と言うほどいい人であった。
 なんだかんだと本当に君が良ければ住んで構わないと言ってくれたが、なんとか断った。その代わりに、自分が使わなくなった家具や発明品やらを貰い、業者まで呼んで借りたアパートに運んでくれて頭が上がらない。
「本当にありがとうございました」
「なんのなんの! 新しく開発した物もあるからそれの感想なんか貰えれば嬉しいんじゃが」
「是非使わせて頂きます」
 ついでに、スタンドについて凄い興味を持たれて今後データを取ることも快く受け入れた。
 この態度にコナンは呆れた笑いを零していた。こらこら、小学一年のする顔じゃないよ。
 こうして、この世界でやっていくことになり、コナンには阿笠博士を引き合わせてくれた感謝をした。
 住まいは低家賃の木馬荘というアパートメント。築年数はあるが外見は割とお洒落である。
 民生の人からある程度事情を聞いていたようで何か出来れば遠慮なくとこれまた優しい人でその大家もアパートに住んでおり、そこの一人息子である開人君も怪しい私を遊び相手に選んでくれる可愛い男の子だ。
 この間、博士の発明品である自動掃除機が故障のため直して貰おうと博士宅を訪れたら、博士の背から警戒を見せる小さい女の子がいた。何でも親戚の子らしいのだが、異常なまでに私を怖がってしまい私は早々にお暇した。三日後に治ったと連絡があり、掃除機を取りにいくついでにケーキを買い子供の機嫌をとろうとしたが失敗に終わってしまった。
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